日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『バットマン:ノーマンズ・ランド』
『バットマン:ノーマンズ・ランド』 第3巻
ジャネット・ハーヴェイ、ラリー・ハマほか(作) セルジオ・キャリエロほか(画)
高木亮(訳) 小学館集英社プロダクション ¥4,000+税
(2017年2月15日発売)
ニューヨークの闇の側面を抽出して創られた架空の街「ゴッサムシティ」。バットマンが犯罪撲滅に取り組むその街が、ある日とつぜん大地震に襲われた。
まるで関東大震災に襲われた東京のように壊滅したゴッサムは、アメリカから切り離され、立ち入り禁止を宣告される。
かくして時代は現代に設定されたまま、バットマンたちはいわゆる「ポストアポカリプス」的状況におかれることになった。
様々な理由で街を捨てられない多くの市民たち。バットマンと何十年も戦ってきたおなじみのヴィランたち。そして、ロビンやバットガール、アズラエルといったバットマンとともに街を守るファミリーの面々。崩壊し、孤立したゴッサムで、さらに過酷な日々が始まる。
近代的な社会秩序が崩壊し、アメリカ人たちがまるで中世ヨーロッパのような暗黒時代をサバイブする群像劇という意味では、本作はドラマ化で人気の『ウォーキング・デッド』に共通する。
無法地帯で互いを殺しあう疑心暗鬼が常態化した世界で、ゴードン本部長たち元ゴッサム市警の面々がなんとか秩序を回復しようと戦う姿も『ウォーキング・デッド』を彷彿とさせる(本作の原作は1999年に刊行されたのに対し、『ウォーキング・デッド』は2000年以降の作品)。
ペンギン、トゥーフェイス、スケアクロウといったおなじみのヴィランに続いて、今回はとうとう『ダークナイト・ライジング』(この映画も本作に似た状況が描かれていた)で悪玉を演じたベインが登場。孤立したゴッサムシティの「外部」から、何かしらの陰謀を秘めた第3の勢力を導き入れる。
ベインの登場も気になるが、なんといってもジョーカーとハーレイ・クインの最凶バカップルがやっぱり楽しそう。
第1巻のごく緊迫した雰囲気もすばらしかったが、この2人は別格。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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