日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『おかえりオーレオール』
『おかえりオーレオール』
高津 プランタン出版 ¥670+税
(2017年2月27日発売)
「カズとは家が近所で だからなんとなく友達で
いつからかカズは俺のことが好きで 俺は今日18歳になった」
すっきりとした描線で紡がれる淡々として叙情的な空気。もうすぐ終わりそうな思春期の日常のなかの、少年同士の恋。
幼なじみのモトへの恋心が芽ばえてしまって戸惑う中学生のカズはすごくかわいいし、そのカズから魅力的に見えるモトの描写もすばらしい。たまらん、せつない。
中学生の時にモトへの気持ちに気づいてしまったカズは、たまらず気持ちを伝えてしまう。
好意を完全に受け入れることはできなくても、「俺だって一緒に考えたい」というモト。
それから高校生になってからモトがカズに
「中3のあの時から 俺に言えなくなったこと
たくさんあるんじゃないのか」
「それ 教えてくれよ」
と告げる。
すごく身近な幼なじみだからこそ気持ちが近づきすぎてしまって、抑えきれなくなった、それを受け止めて、時間をかけて考えた。
互いの距離を、2人はそれぞれ真剣に考え、悩み続けていたのだろう。「言えなくなったこと」を知りたいと、モトが言葉にする瞬間。
間違えたことをいえばお互いが傷ついてしまう、かといって無難な言葉でお茶を濁すこともできない。ギリギリの選択から発せられた言葉は、とてもあたたかい。
とても軽やかで気持ちのいい良作。オススメです。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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