日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『このマンガがすごい! comics 女の修羅場』
『このマンガがすごい!comics 女の修羅場』
津雲むつみ/佐藤こず枝/はざまもり/魔木子/のがみけい/桐野さおり
関谷青子/島津郷子/小牧成 宝島社 ¥550+税
(2017年4月14日発売)
女性の専業主婦志向が高まっているという。
気楽な暮らしへの憧れらしいが、本当にそうなの? なんとも考えさせられる、読み切りアンソロジーが登場した。
先日訃報があり、惜しむ声が多くあがった津雲むつみの作品も収録されている。
玉の輿ではあるが、異常な性癖の夫やその家族に縛られるとか、婚外恋愛から破滅に陥るとか……。
一見華やかでドラマチックだったりしても、幸せが続くとはかぎらない。
それは特殊なケースで、よくよく相手を選べば安泰ですって?
いやいや、不妊のプレッシャーから来る買い物依存、ヤミ金に手を出さざるをえない生活苦、わがままな老義母の介護などは、だれにでもふりかかる事態だ。
理不尽な生き地獄は、いつでも口を開けて待っている。そこへ堕ちていく描写が丁寧で、自分の身につまされてゾクゾクしてしまう。
自分こそ大黒柱と自負する、男らしいタイプの夫ほど、妻をひとりの人間として認めない傾向がある。主婦の足場はとてももろいのだ。
また、主婦だけでなく、独身女性の視点から描くやり場のない愛や、男性上司のパワハラに苦しむキャリアウーマンなど、どんな立場でも悩みは尽きないんだよね、と女友だちに久しぶりに会ったような気持ちにもなる。
女性は、大人になるにつれて並大抵のホラーを怖がらなくなるもの。じつは日常にこそ「本物の怖いこと」が潜んでいると気づくからだ。
とはいえ『女の修羅場』には、おおむね救いがあり、「明日もがんばろう」「未来のために、一歩踏み出そう」という気持ちにさせてくれる作品が多い。
女性は非力かもしれないが、女同士の共感は大きな力になってくれる。そのバイブルとして、そっと本棚にしのばせておきたい。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。