日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『クミカのミカク』
『クミカのミカク』 第3巻
小野中彰大 徳間書店 ¥620+税
(2017年3月13日発売)
『クミカのミカク』は、「月刊COMICリュウ」の新人賞・龍神賞で銅龍賞を受賞し、連載が始まった小野中彰大による新感覚食マンガ。
最近、料理マンガやグルメマンガは飽和気味だが、『クミカのミカク』は外星人である会社員クミカが“食事”そのものを覚え、味覚を広げていくというアイデアで、ほかの作品と差別化を図っている。
大人になるとどうしても“食べる”ことに対しての心の動きは鈍くなるもの。
初めて食べたアイスの甘さ、家族といっしょに行ったレストランのにぎやかさ、ひと口もらった大人の珍味のまずさ……。
『クミカのミカク』は、そんな子ども時代の何かを食べた時のピュアな感動を思い出させてくれる。
舞台は“外星人”が普通に暮らす日本。
第1巻では食事そのものを取る必要がない外星人クミカが、会社の同僚がつくってくれた鍋焼きうどん、残業で食べるHOKA弁、初料理となる手巻き寿司……など、食事という行為を通して徐々に人間らしい感情に目覚めてゆく。
外見は大人なのに、まるで小学生が食べ物を口いっぱい頬張ったかのようなクミカの食べっぷりは愛らしい。
味に反応して形状を変える、頭の触手も表情豊かだ。
最新の第3巻では、クラゲに似た体質のクミカの隣人メロウ、惑星間渡航の技術を持った大企業の令嬢ハルニら新たな外星人たちも登場。ハンバーグ、ゼリー、ラーメン……。彼女らにとって地球食は刺激的。
その反応は見ていて楽しい。クミカ以外の外星人にも光を当てることで、物語はさらに広がった。
喜び、感謝、分かち合い。本作は、忘れがちな“食”のありがたみを、クミカのかわいさ、キャラの魅力を通して読者に伝えるコミックなのだ。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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