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『宮沢賢治の食卓』魚乃目三太【日刊マンガガイド】

2017/04/25


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『宮沢賢治の食卓』

  
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『宮沢賢治の食卓』
魚乃目三太 少年画報社 ¥680+税
(2017年3月27日発売)


魚乃目三太による「思い出食堂」シリーズからの抜粋による、『銀河鉄道の夜』『雨ニモマケズ』などで知られる国民的作家、宮沢賢治の「食」をモチーフにした自叙伝マンガ。

膨大な資料と実際に本人と交流のあった人々への取材を通じて、丁寧に生き生きと描き出される本作の宮沢賢治像は、孤高の聖人といったイメージとは裏腹に、おしゃれで新しいもの好きでユーモアと好奇心にあふれ、涙もろく情に厚くも確固たる信念を持った人物で、読めばだれもが彼を愛さずにいられない!

彼の「生きる意味」を真っすぐに見つめる曇りのない眼差し、実直でユーモアにあふれた語り口がまた、あたたかで抒情的な魚乃目三太ワールドと見事にマッチ。

賢治が花巻で西洋野菜を育てるきっかけとなるハヤシライス、「ブッシュ」のサイダーと天ぷらそば、「あめゆじゆとてちてけんじゃ」につながる、妹・ヨシと食べた雪の「アイスクリーム」など……。作中に登場する食べものも当時の東北の人々の素朴な暮らしぶりを伝えるだけでなく、宮沢賢治の人となりや暮らしぶり、作品世界としっかりとつながっていて、ファンならずとも宮沢賢治作品をあらためて読み返したくなる圧倒的魅力に満ちている。

嵐山光三郎『文人悪食』『文人暴食』に象徴されるように、食を通じて作家を見れば、意外やその作品の本質がかいま見えたりするものだが、本作もまさにその系譜に位置する。

「最近よくあるグルメもんね~」と思ったら大間違い。食いしん坊にも文学ファンにもオススメしたい。

なお、本作を原作にした同名連続ドラマが6月よりWOWOWにて鈴木亮平主演でスタート。こちらも合わせてどうぞ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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