日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『だんしんち』
『だんしんち』 第1巻
岡叶 KADOKAWA ¥580+税
(2017年4月10日発売)
立川にある木造ボロアパートの102号室。
家賃月3万5千円、バイトの月収約10万円でひとり暮らしをする大学2年生・“だんしん”こと壇野心志(だんの・しんじ)の部屋は、同級生の“ぐーぐー”こと神宮寺悠寓(じんぐうじ・ゆうぐう)と“シャンピ”こと石徹白武道(いとしろ・ぶどう)が入りびたる“たまり場”になっていた。
きょうも今日とて彼らは、3人で大はしゃぎながら昼飯の袋めんを調理して上の階の住人に床(ゆか)ドンで怒られたり、ゴムボールとペットボトルで室内野球に興じたりと、まったくもってくだらない日々を送る。
大学生ではあるがキャンパスライフはあまり描かれない。そりゃそうだ、だんしん家(ち)なのだから。
だけど、それがいいんだよなあ。
モラトリアムよろしく毎日ダラダラ過ごして、とりとめのない話をして……。
でも、こんな時間もいつかは終わる時がきっとやってくる。
“その日”を想像してアンニュイな気分になる時もあるだろう。
大学を出て社会に放りこまれれば、“何もない時間”なんて求めても手に入らなくなる。
ゆるゆるいやし系のぐーぐーも、サブカルドSのシャンピも、そして当のだんしんさえもいつかは“そちら側”の人間となるのだろう。
たとえそれらが思い出すだに恥ずかしい記憶であろうと、あるいは思い出せないほどの薄くおぼろげな記憶になろうと、コミコミで生きていけばいい。
読んでいるわれわれは「あるある!」と共感するもよし、「んなわきゃあないw」と笑い飛ばすもよし。
それが“だんしんち”をのぞき見る時の、お作法ってもんです。
<文・富士見大>
思い出したとたん赤面死しそうなほど恥ずい大学時代の記憶ならまあまあたくさん持ってる編集・ライター。ただ今、絶賛発売中!! の『俺たちの仮面ライダーシリーズ 電王 10th ANNIVERSARY』と、昭和特撮の秘話がたっぷり掲載の『特撮の匠 昭和特撮の創造者たち』参加。