日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『早乙女選手、ひたかくす』
『早乙女選手、ひたかくす』 第2巻
水口尚樹 小学館 ¥552+税
(2017年4月12日発売)
女子ボクシング・フェザー級チャンピオンにして、オリンピック出場が期待される早乙女八重。
見事に割れたシックスパックの腹筋を持つ17歳のクールビューティーと、冴えないボクシング部員のサトルの秘密の恋を描いた異色の恋愛マンガの第2巻が登場。
八重にしろサトルにしろ恋愛に関してはまったくの奥手。
なにしろ、第1巻でやった恋人らしいことといえば、手をつなぐのがやっと、という超スローペースな仲である。
他方で、ボクシング選手としてはまったく見どころのないサトルが、八重のトレーナーとして才覚を発揮するなんてエピソードもあり、意外とスポーツマンガとして展開していくのかな……なんて思っていたが、そんなことはなかったこの第2巻。
冒頭から、秘密のハズの交際を、ザ・女子高生という感じの紺野美都に知られてしまうのだけど、この紺野さん、イジワル系のお邪魔虫と思いきや、意外なことに世話焼きで、2人の仲を(いささか強引ながらも)急速に推し進めるキューピット役であったのだ。
“いっしょにお買いもの”“彼女の部屋に遊びにいく”、そして王道“合宿先の浴場でのまさかのハプニング”と、おお、すげえ、普通にラブコメしてる!
もちろん、役者が早乙女さん&サトルくんなので“普通のラブコメ”をやってもメチャクチャぎこちなく、そもそも紺野さんという保護者同伴だったりするのですが、しかしその不器用さがいい!
とりわけ夜の2人のランニングシーンなんてもう、青春すぎて青春すぎて……。
紺野さん、よくやった。本巻のMVPは間違いなくあなただ!
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas