日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『BEASTARS』
『BEASTARS』 第3巻
板垣巴留 秋田書店 ¥429+税
(2017年5月8日発売)
動物たちが織りなす学園マンガ、いよいよ青春まっただなかの様相を呈してきた。
演劇部の新歓公演で、急遽舞台にのぼることになったハイイロオオカミのレゴシ。
心優しくおとなしい性格なのに、舞台上で筋書きにないとっくみあいを演じてしまったことで注目を浴びる存在に!?
下級生のファンもできたけれど、目立つことが嫌いなレゴシはただ悶々とする毎日。
その理由は気になるメスウサギ・ハルとの接近だったり、肉体の成長とともに己のなかで主張し始めた“獣の本能”だったり。
そもそもこの2つが無関係ではないことこそ大問題で……。
夏が近づき、周囲は「隕石祭」なる一大イベントのためにソワソワし始める。
「すべての動物にとって祖先であり神でもある特別な存在」たる恐竜の霊を迎え入れる隕石祭は、人間にとってのお盆のようなもの!?
お祭りムードのなかでも、あいかわらずレゴシは浮かない顔。
どこにいってもアイデンティティ問題からは逃れようがない、これが思春期というやつなのだ!
級友のニワトリやトラやワシなど様々な動物たちの、生きるうえでの“個人的な”姿勢が描かれるのは人間ドラマと変わらないが、ここに動物としてのアイデンティティが絡んでくるのがややこしくも奥深い。
街をあげての隕石祭を前に、波乱の予感……今もっとも続きが気になる作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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