日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『のぼる小寺さん』
『のぼる小寺さん』 第4巻
珈琲 講談社 ¥590+税
(2017年5月1日発売)
小寺さんはボルダリング大好き少女。登ることが何より好き。
あまりしゃべらないけれども、別にクールなわけじゃない。
ボルダリング仲間とつるみながら、楽しそうに登る、ボルダリングバカだ。
そんな彼女に惹かれる人が続出。熱いし、ちょっとえっちだし。
彼女のことが好きで、ボルダリングを始めた四条が、最終巻の初めのほうで、あっさり彼女をつくっていて仰天。
ボルダリングが楽しくなり、小寺さんへの惚れた腫れたの憑きものがすっかり落ちてしまったのだ。
第4巻では小寺さんを中心にした少年少女の情熱が強く描かれる。
小寺さんは進路希望欄に“クライマー”と書く。
好きなのはよくわかるけど、それは仕事になるのか?
彼女には、登る壁しか見えていない。本来ならもっと視野を広く、といいたくなるところ。
でも小寺さんは目の前の壁をじっと見つめ、登ることのみを考え、とても楽しんでいる。
彼女を止めることなんてできないし、何より彼女が登ること以外をするとは到底思えないような迫力がある。
後半、スポーツクライミングの試合が描かれる。
ここは“自分との戦い”はいったん置いて、どう勝つかに主軸が置かれる。
勝つためなら自分を捨てる、というストイックな選手・迫田と、勝ちたいけどそれは次の壁を登りたいから、というスタイルの小寺さんのやり方は、対極的。
どちらが正しいではなく、ボルダリングへの様々な向きあい方が描かれている。
そんななか、四条が棄権するシーンはとても印象的。
それもまた、ボルダリングを愛する、真剣な向きあい方だ。
非常に熱量が高いこの作品、あらためて読み直すと、小寺さんの鍛えあげられた体は、やっぱりちょっとえっち。そしてとっても自由。
小寺さんを見ていると、彼女に惚れた卓球少年・近藤のように、自分も自分の道をがんばろう、と力が湧いてくる。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」