日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『香川 久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック』
『香川 久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック』
香川久/馬越嘉彦 玄光社 ¥2,000+税
(2017年5月13日発売)
『フレッシュプリキュア!』『タイガーマスクW』の香川久。
『おジャ魔女どれみ』『ハートキャッチプリキュア!』の馬越嘉彦。
キャラクターデザイナーとしてたしかな実績を誇る2人のスーパーアニメーターが、描き下ろしの豊富な実例に即してそのデザインの極意を語った本が刊行された。
その内容は、徹底した実践性が特徴だ。
ただ見栄えのみを重視するのではなく、いかに企画の、作品全体のことを考えながらデザインするか。求められたコンセプトをしっかりと踏まえるのはもちろんのこと、いかに動かすか、どのような演出を可能にするかを考えながら描かれたキャラクターたち。自分自身のクリエイティビティを存分に発揮しつつ、集団作業における立ち位置を意識した仕事。
ようするに、同じ作品に携わるほかのスタッフを刺激するようなデザインとは、いったいなんなのか? どんなことを心がけておくと、デザインを受け取る人に喜ばれ、気持ちよく仕事をしてもらえるのか? そんなことが、本作を紐解くと見えてくる。
もちろん、そうした技法書としての楽しみ方だけでなく、単純に香川と馬越のここでしか見ることのできない描き下ろしイラスト(しかもキャラ表風、イメージボード風、版権イラストの下絵風などなど、バリエーションも様々だ)を堪能できるという意味でも、優れた1冊に仕上がっている。
また、絵に添えられたコメントからかいま見える、2人のインスピレーションの源泉も興味深い。
主に香川は日本のタレント・アイドル、馬越は洋画の登場人物に刺激を受けているようだが(具体的な人名・タイトルは本作を参照されたし)、インプットの違いがいかにデザインに表れるか。そんなところを読み解くのは楽しいものだ。
イラストレーター、アニメーター、はたまたそのほかにもキャラクターメインの絵を仕事にする人には強くオススメ。
もちろん、とにかく2人の絵を堪能したり、ルーツや仕事術を語ったインタビュー、コメントを読みたいファンにとっても、しっかりとニーズに応えてくれる本に仕上がっているので、安心して手に取ってほしい。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei