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『1日外出録ハンチョウ』 第1巻 萩原天晴(作) 福本伸行(協) 上原求・新井和也(画) 【日刊マンガガイド】

2017/07/01


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『1日外出録ハンチョウ』

  
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『1日外出録ハンチョウ』 第1巻
萩原天晴(作) 福本伸行(協) 上原求・新井和也(画) 講談社 ¥580+税
(2017年6月6日発売)


『このマンガがすごい!2017』オトコ編で第1位に輝いた『中間管理録トネガワ』に続く、『カイジ』シリーズ・スピンオフの第2弾。
今回の主役は帝愛グループの地下強制労働施設でカイジを苦しめた大槻班長だ。

この強制労働施設で働いているのは、帝愛グループの債務者たち。
彼らは決められた年数を経過するまで決して地上に出ることはできない。
しかし50万ペリカ(5万円)を払えば特別に1日外出券をゲットできる勤労奨励オプションも用意されている。

そのためには日々のビールやお菓子をグッと我慢して、コツコツと金を貯めなければならないのだが、大槻は班長という立場を利用してぼったくり物販を行い、さらにはチンチロの開帳でも儲けているので、数カ月に一度は外出できるのだ。
はたして大槻はシャバでの貴重な1日を、どれほど有意義に使っているのか?
その記録を余すところなく活写したのが本作である。

普通の人間ならば久しぶりの外出機会に浮き足だち、やれ焼き肉だ、やれパチンコだ、やれキャバクラだと大慌てでハシゴをし、タイムリミットが来れば醜く駄々をこねまくるのが常。
ところが大槻はどっしりと構え、リーズナブルに、そして最大限に1日を堪能する。

たとえば平日のランチタイムにパリッとしたスーツを着て、あえて立ち食い蕎麦屋に入り、生ビールをあおる。
こうすることで、多忙+金欠で安い蕎麦をすするしかないほかのサラリーマンたちから羨望の視線を浴び、優越感をつまみにおいしい酒を飲むことができるという寸法だ。

こうした頭を使った休日の過ごし方指南のほか、ネットビジネスで一般化している“自動更新”や“アンリミテッド”といった商法を参考にして債務者たちから小銭を巻きあげるエピソードなどもあり、その圧倒的狡猾さに感心してしまうこと必至。
どんなに過酷な環境下でも創意工夫で人生を謳歌する小悪党、そんな大槻班長こそが現代のワーキングクラスヒーローかもしれない。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。

単行本情報

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