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7月1日は「郵便番号記念日」『ぽすたるWORK』を読もう!【きょうのマンガ】

2017/07/01


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが 「きょうのマンガ」です。

7月1日は郵便番号記念日。本日読むべきマンガは……。


PostalWork_s

『ぽすたるWORK』
依澄れい KADOKAWA ¥580+税


手紙やモノを送る人がいる。それらを受け取る人がいる。
この両者をつなぐ事業が、郵便配達だ。

近現代において、郵便は技術や制度を様々に進歩させてきたが、“届ける”という役割の根本的な重みはずっと変わらない。
そのなかで、よりスムーズな配達を追求して生まれた仕組みのひとつが、郵便番号である。
都道府県・市区町村・建物などに割り振られたナンバーを参照することで、郵便物のふりわけや届け先の位置把握をぐんと精密にして、お届け時間を短縮できる優れものだ。

今日7月1日は、そんな郵便番号が日本で初めて導入された記念日。
1968年のこの日、まずは集配業務をになう郵便局に3ケタまたは5ケタの番号があてがわれ、自動読取区分機の採用が推進されていった。
番号は、当時の郵便輸送のメインだった鉄道の経路にある駅の順にそって割り当てられた。
これにより郵便事業のオートメーション化が確固たる歩みを始めたわけだ。

ただ、番号が決まっても利用者がそれを認知し、送る時に指定してくれないと何も始まらない。
導入初期には、郵便物に番号がちゃんと記載されている割合は全体の50〜60%程度だったという。
そこで、いわゆる“郵便番号簿”をすべての家庭に配布するなど周知を徹底するキャンペーンが行われ、しばらくの月日をかけてようやく、我々が常識としている郵送の手続きが定着したという次第だ。

ちなみに番号が現在のように7ケタに増えたのは、1998年のこと。
これでアドレス指定の精度はさらにあがったが、タイミング的にはインターネットの一般普及で手紙がメールにシェアを奪われていく少し前だったりする。

さて、今回は郵便にちなんだ記念日ということで、それが作品のメインになるマンガを紹介しよう。
タイトルは『ぽすたるWORK』

のちに麻枝准(key)原作による『ヒビキのマホウ』を描いた依澄れいの初期作品で、「月刊少年エース」増刊「エース桃組」で2001年から約3年間にわたった連載をまとめた、著者の初単行本だ。

主人公は、小さな田舎町の郵便局に勤める女の子・文野ふみ子。
書きあがった手紙に封をして切手を貼る瞬間にうっとり恍惚とするほどの手紙マニアでもあり、自分が配達した手紙に関係して悲しむ人や困っている人がいれば仕事の範囲をこえても手をさしのべずにはいられない。
手紙といっしょによろこびが届くようにと願う、底抜けに優しい郵便屋さんである。

登場キャラクターには擬人化ケモノ娘の要素もあり、例の童謡のように手紙を食べてしまうくせがある白ヤギ・黒ヤギさんや、ふみ子の幼なじみで黒ネコの宅配便屋(ギリギリだ!)“くーちゃん”などをまじえて、ほのぼのしたエピソードがいくつも展開する。
そのうえで、最終的にはふみ子とくーちゃんが幼い頃につらい思いをしたおりに、それぞれ傷ついた相手へ手紙をおくってお互いを救いあった過去が明かされ、手紙や郵便のはたらきを介して、心に影さす部分までしっかり捉えているのが誠実ですばらしい。

手紙を書く、送る、受け取る、あるいは拒否する……そして、届ける/伝える。
ひとのコミュニケーションを具体的なかたちで演出する際、郵便というのは非常に優れた題材だと気づかされる作品だ。

そんなわけで、郵便とゆかりのある日に、こういう作品を読んでみるのもいいのではないだろうか。
考えてみれば、マンガもまた、著者やキャラクターが何かをこめてあなたに送った手紙のようなもの。
それを、今日はふだんよりも意識して受け取ってみよう。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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