日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『バタフライ・ストレージ』
『バタフライ・ストレージ』 第2巻
安堂維子里 徳間書店 ¥620+税
(2017年6月13日発売)
『バタフライ・ストレージ』は、『世界の合言葉は水』『妖精消失』など叙情的でファンタスティックなSFを描いてきた安堂維子里の新シリーズ。
上記2作が“静”ならば、本作は“動”!
ハードなアクションとつくりこまれた世界設定、立ちまくりのキャラで読者を引きこむ、近未来SFとなっている。
人が死ぬと魂のデータが蝶として抜け出て肉体は急速に朽ちる近未来。
日本は蝶を凍結保管しサーバに納め、ビッグデータとして運用している。
主人公の小野百士は、その蝶を回収し、守る国家機関“死局”特殊捕蝶班の一員。
だが、14年前に何者かに奪われた双子の妹の蝶を探すため、蝶を裏取引する組織を取り締まる任務で暴走する……。
度を越したシスコンで蝶に執着する青年・百士と、にこやかで腹黒なタヌキ系上司・田中を筆頭とした特殊捕蝶班の面々のドラマは躍動感あり。
第2巻では彼らが死局に所属する理由も徐々に明かされて、物語に厚みが増してきた。
人の魂が蝶になるというイメージは、古来の神話や伝説にも見られる。
そこをフックに警察系チームものとSF設定をうまく絡めた『バタフライ・ストレージ』。
魂が翅(ハネ)を休める場所はどこにあるのか?
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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