日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『バチカン奇跡調査官』
『バチカン奇跡調査官』 第2巻
藤木稟(作) 日野杏寿(著) THORES柴本(キャラ原案) KADOKAWA ¥550+税
(2017年6月27日発売)
『バチカン奇跡調査官』は、神父のコンビが、世界中で起こる「奇跡」の謎に挑む、というホラータッチのミステリ。
2017年の7月から、WOWOWやTOKYO MXなどでTVアニメも放映される(監督は米たにヨシトモ)。
本作は、その人気シリーズのコミカライズ作品である。
天才科学者の平賀・ヨゼフ・庚、暗号解読のエキスパートであるロベルト・ニコラス。
2人の若い神父は、「奇跡」と申告された現象の真偽を確かめる役割を担った「奇跡調査官」なのである。
2人は、調査に飛んだ、アメリカのセントロザリオ教会で、まさに「奇跡」としかいいようのない現象に直面する。
生徒が、宙に浮かび、その背中には鞭で打たれたような痕が残る「聖痕現象」が発生。
教会のマリア像が涙を流し、居所の壁にはキリストを抱いた、鮮明な聖母子像が現れた。
さらには、この教会には処女懐胎したシスターがいるという……。
そして、聖人の死になぞらえた、血なまぐさい見立て殺人が続発する。
奇跡の調査と、殺人事件の捜査、2つの謎を平賀とロベルトは解き明かしていくのである。
奇跡の調査――というと1冊のミステリー小説が連想される。
奇跡がこの世に存在することを証明するために、すべてのトリックが不成立であることを立証する探偵・上苙丞(うえおろじょう)が登場する、井上真偽『その可能性はすでに考えた』である。
密室殺人や人間消失といった不可能犯罪も、外見上は奇跡である。
しかし、そのほぼすべてはトリックを用いた人の手によるものだ。
だが、あらゆる可能性を追求し、それでも説明がつかなければ、それは「奇跡」なのではないか……。
そのように真の奇跡を求める上苙は、平賀・ロベルトコンビと同じスタンスといってよいだろう。
『その可能性はすでに考えた』は、そうした「奇跡」を希求する探偵が活躍する、風変わりなミステリーなのである。
ちなみに、『バチカン奇跡調査官』は、以前にも金田榮路によりマンガ化されていた。
『バチカン奇跡調査官 黒の学院』と『バチカン奇跡調査官 サタンの裁き』の2冊が出たが、掲載誌「コミック怪」の休刊とともに刊行が途絶えた。
今回の日野版の出版に合わせて、こちらも増刷などされて書店に並んでいるので、興味のある方は手に取って読み比べてみてはいかがだろうか。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2017本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。