日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『HUNTER×HUNTER』
『HUNTER×HUNTER』 第34巻
冨樫義博 集英社 ¥400+税
(2017年6月26日発売)
まさに“待望の”と呼ぶにふさわしい最新刊。
それは単に刊行まで時間的に待たされたというだけでなく、長年にわたって焦らされ続けてきた「ヒソカとクロロの対決」がついに実現したということでも、ファンにとっては待ち望んだ1冊といえるだろう。
そして、その内容は期待以上……というか、いわゆる「異能バトル」というジャンルでのひとつの頂点なのでは? とすら思える緻密かつ複雑な一戦となっている。
もともと、厳格なルールによる縛りが『HUNTER×HUNTER』におけるバトルの特徴ではあったが、素直に理解するだけでも複雑なルールをさらに裏読みし、そのうえで画面の隅々まで見なければ真に何が起きているのか理解できないのが「ヒソカVSクロロ戦」。
審判や観客の人体をも「アイテム」として使う掟破りの戦法も含め、少年マンガ史に残る限界ギリギリのバトルは「必見」というほかはない。
しかもそのバトルも、「暗黒大陸編」全体としては、ほんの片隅の出来事でしかないというのが恐ろしい。
そして単行本後半から展開するカキン王国の王位継承を巡るエピソードも、ドロドロの策謀まみれになること必至。
さらなる血と惨劇を招くことがわかっていながら、一方ではワクワクが止まらないこの感覚こそが『HUNTER×HUNTER』だ。
ヤバい、やっぱりメチャクチャおもしろいじゃないですか……。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。