『ちひろさん』第2巻
安田弘之 秋田書店 \ 619＋税
（2014年9月16日発売）

『ショムニ』の安田弘之が、以前「モーニング」の増刊誌で発表していた風俗嬢・ちひろの物語『ちひろ』の続編にあたる新連載。
最新2巻も前巻同様、風俗嬢をやめ、海辺の小さなお弁当屋で働き出した彼女と様々な人々との交流が淡々と描かれてゆく。

女子中学生、OL、男子小学生、ホームレス、居酒屋のおやじ、ニューハーフのホステス……。年齢も職業もキャラも様々な、けれど、何かしらの事情を抱えた人々に対し、ちひろは共感するでもなく、諭すでもなく、ただ黙ってそのままのその人を受け止める。
切なくもあたたかく、心にポッと灯がともるような読後感は『深夜食堂』にも通じる感じ。
「いい人になろうとも思わない 成長したいとも思わない なりたい自分なんかない」と、飄々と気ままに生きる彼女は、実は人並み以上の孤独や空虚を抱えているのだけれど。それを当然として受け入れているからこそ、俗世の社会のしがらみからは自由で毅然としていて、こんな風に生きれたらいいなあ……と魅了されずにいられない。

「悩みってほんとはすごくシンプルなことを あーだこーだ言い訳することから始まるのね」「言い訳ときれいごとを全部引き算していくと最後に着色されてない裸の感覚が残るでしょ」
そんなハッとさせられる真理が散りばめられた一冊。なんか生きづらいなーと感じている人、必読です！

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69