『エンバーミング THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』第10巻
和月伸宏 集英社 \438+税
(2015年5月1日発売)
人造人間(フランケンシュタイン)に家族を殺され「すべての人造人間を殺す」と復讐を誓ったヒューリー=フラットライナー。
幼なじみで恋人の少女・エルムをもとの人間に戻す方法を探す青年アシュヒト=リヒター。
倫敦(ロンドン)の人造人間殺し屋で、自分の本当の過去を知り、彼らとともに戦うことになる人造人間のジョン=ドゥ。
人と人造人間がそれぞれの想いを胸にイギリスを駆けめぐる、ハードアクションの最終巻。
和月伸宏特有のギミックの効いた人造人間たちが、戦闘を繰り広げたこのマンガ。ジャック・ザ・リッパーの異形の肺を利用した殺傷や、筋肉特化型の筋繊維を利用した戦闘は、絵でしか表現できない世界だった。
最終巻では、ラスボスとして「死体を愛している」死体卿との戦いになる。
今までの敵である「究極の8体」すべての能力を使える様は、チートとしかいえない。
物語は、ヒューリー、アシュヒト、ジョンの3人を中心に進んできた。
この3人の決意は前巻の時点で固め済み。最終巻である10巻は、「ケリ」をつける巻だ。
群像劇形式を取っているため、他のキャラクターがどう「ケリ」をつけて、次の人生を選択するかも、本巻のキモになっている。
グロテスクな表現を駆使して物語を描きたいという、和月伸宏の要望のもと「ジャンプSQ.」ではじまったこの連載。
彼が描きたかったもののシメは、ラストに出てくる「黒博物館」の描写に表現されているので、必見。
内容的にはハッピーエンドとは言いがたい。特にエルムとアシュヒトの行く末は、あまりにもやりきれない。
「人造人間に進んで関わるのは、悪人か狂人のどちらか」というテーマは一貫している。
あらゆる人と、人造人間がそれぞれの想いをかかえながら、この物語は「終結」ではなく「分散」していく。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」