日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『弟の夫』
『弟の夫』 第4巻
田亀源五郎 双葉社 ¥620+税
(2017年7月12日発売)
ハードコア・ゲイコミックの巨匠、田亀源五郎が初の一般青年誌で描くホームドラマ『弟の夫』も、ついにこの第4巻で完結。
交通事故で亡くなった弟の「夫」であったカナダ人・マイクが、兄である弥一のもとに滞在することになる、という導入で始まった本作だが、ついにマイクとの別れの日がやってきた。
表紙イラストでは3人が、青空に架かった虹を見上げているが、弥一の表情は、第1巻の釈然としないそれとはまるで別もの。
けして長い時間とはいえないマイクの滞在だったが、大きな変化を弥一に与えたことがわかる。
突然にやってきた「弟の夫」というストレンジャーを、胸を張って「夫の配偶者です」と語り、マイクを、そして疎遠なままに亡くなってしまった同性愛者の弟を、家族として受け入れるまでの4冊。
それを、わかりやすい悪役を用意するといった安易な展開に頼ることなく、1つひとつ丁寧な描写を積み重ねて描いたがゆえに、深い余韻を与えてくれる。
未読の方もぜひ、完結を機にお手にとってほしい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas