365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月17日はパイナップルの日。本日読むべきマンガは……。
『クールパイン』
南Q太 祥伝社 ¥933+税
パ(8)+イ(1)+ナ(7)=パイナで、本日はパイナップルの日。制定したのは株式会社ドール。“Dole”と表記したほうがおわかりいただけるだろう。バナナやパイナップルに赤文字のシールがペタッと貼ってある、あのDoleである。
パイナップルはパイン+アップル。
パインとは松のこと、そしてアップルはかつてリンゴのような甘い香りや似たような味がすることから、“松のような外見を持った果実”としてパイナップルと命名されたという説もある。
てなわけで“きょうのマンガ”は南Q太の『クールパイン』をピックアップ。
先にお断りしておくと、本作にパイナップルを食す描写は皆無である。
10代向けの原宿系ファッション誌としてブイブイいわしていた頃の「Zipper」から生まれた漫画誌「Zipper Comic」の創刊号(2000年)から2002年2・3月号まで7回にわたって連載された本作は、「南Q太の漫画デビュー10周年を飾る傑作!」という宣伝文句がついていた。
傑作かどうかは個人個人が実際に読んでたしかめていただくとして、デビューから10年経ち、30代に突入した彼女のペンは、強固なQ太ワールドを確立しているのがよくわかる。
掲載誌の対象読者はストリートファッションが大好きな10代の女の子。
『クールパイン』の主人公も女子校生の里香だ。
学校でもイケてるグループに所属する美少女。
そんな彼女がアフロの先輩の家にうっかりついていき処女を捨てるシーンから幕を開ける。これがいきなりすごい。興味本位でついてきただけで、怖気づいて帰ろうとする里香の頭をアフロがゴツンと殴り、「あんたみたいのは、どうせすぐ誰かにやられちゃうんだから」といいくるめ、そのままセックス。
やられた里香も里香で、帰りに携帯でさっそく友だちに笑顔で報告するのだ。ただし、その表情はどこか冷めていて――。
ここから物語が大きく動き出すようなことはない。なりゆきで処女を捧げた先輩とずるずると関係を続け、夜遊びを覚え、いつしか気持ちが強くなり、嫉妬を覚え……といった心の揺れが、セリフをギリギリまで削ぎ落して描かれる。
鮮烈な黄色のバックと、パインのリングにフォークを通した印象的な表紙。
読了後に眺めると「なるほどな」と腑に落ちる(ような気がする)。
うだるような暑さのなか、クーラーの効いた部屋で、ひんやりしたラブストーリーを読むのもオツなものだ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。