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8月24日は「イタリアのヴェスヴィオ山が大噴火を起こした日」 『プリニウス』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/08/24


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

8月24日はヴェスヴィオ山が大噴火を起こした日。本日読むべきマンガは……。


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『プリニウス』 第1巻
ヤマザキマリ/とり・みき 新潮社 ¥660+税


紀元79年の本日は、イタリアのヴェスヴィオ山が大噴火を起こした日。その火砕流によって、おおよそ2千人を巻き込んでポンペイを壊滅させたことで知られる噴火である。

「ポンペイ最後の日」は様々な形で物語にも取り上げられているのだが、この大惨事の犠牲となった人物で忘れられないのが、古代ローマの博物学者であったガイウス・プリニウス・セクンドゥス。日本では「大プリニウス」とも呼ばれ、ローマ帝国の海外領土総督としての職務を果たすかたわら、様々な自然界の事象を記録した『プリニウスの博物誌』(以下、『博物誌』)を著した人物である。

この地理や天文から様々な動植物や鉱物、さらに建築物や当時の芸術まで網羅した『博物誌』の学術的な価値はたいへんなものであることは間違いないのだが、もうひとつの魅力は現代の科学的見地からすると眉唾ものの伝承や伝聞も多分に含まれている点。実在の動物と同等の扱いで怪物や巨人族などの記述が含まれており、それゆえに現代では「奇書」という扱いを受けることもあるわけだが、いかなる怪しい話にも好奇心を向けていたからこそ、プリニウスが偉業を成すことができた……ともいえるだろう。

そのプリニウスがとりわけ強く興味を惹かれていたのが「火山」であり、それゆえに最期は悲劇的なものになってしまうわけだが、そんな彼の晩年の足取りを描くのが、ヤマザキマリととり・みきの合作による『プリニウス』。
マンガとしてのエピソードの切り取りかたがすばらしく、プリニウスがいかに魅力的な人物であったかを知るには最適な1冊である。
ただし、このマンガ自体が『博物誌』と同様に虚実が入り混じり、脚色も多いことはいちおう付けくわえておこう。

本作の構成としては、第1話の冒頭からいきなりヴェスヴィオ山が噴火。人々が逃げ惑うなか、プリニウスは魅入られたように火山を観察し、悠長にも風呂に入りながら書記官に記録を続けさせているところから物語は始まる。
もっとも、このままでは数時間もしないうちに主人公が死んでしまうので、第2話以降は少し過去に戻って、プリニウスの“豪快さん”っぷりを描きつつ、なぜ噴火に巻きこまれるに至ったかを紐解いていく……という趣向。
そもそもプリニウスの一行がいたからこそ「ポンペイ最後の日」の記録がかなり詳細に残っているわけなのだが、そのせいで主人公の死が確定しているのは、なかなかにせつないところ。
いくら本作に脚色が多いからといって、同様に絶体絶命のシーンから時間が過去に戻る映画『M:i-3』のように、大逆転で主人公が生き残ることはさすがにないでしょう。

しかし、そうなるとわかっていても、この魅力的な人物に興味が尽きることはありません。
現在も連載中の本作、最後の瞬間までしっかり見届けることにいたしましょう。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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