『百合子のひとりめし』
久住昌之(作) ナカタニD.(画) 復刊ドットコム \1,000+税
(2014年10月26日発売)
ご存じ、久住昌之とナカタニD.が2004年5月~8月に「週刊漫画アクション」で連載していたグルメ漫画が『百合子のひとりめし』。
編集部の都合でわずか7話で連載終了となった幻の作品で、単行本は2006年にナカタニD.が自費出版で少数を発行したのみ。正式な書籍化は今回が初となる。
30歳バツイチの天然系美女・百合子が「ひとりめし」に挑戦することで、第2のひとりライフをいきいきと謳歌してゆくさまが描かれた本作。
テイスト的には、『孤独のグルメ』と『花のズボラ飯』を足して2で割ったような……といえば、超乱暴だが伝わるだろうか?
旅先の食堂のハンバーグ定食にはじまり、ジャンジャン横町の串カツ、横浜中華街のネギそば、群馬サファリパークのダチョウの串焼……などなど、絶妙なチュエーション&メニューもそそるが、本作の魅力はやはり、「ひとりめしズレ」してない百合子の言動にある。
女性の「おひとりさまブーム」も一段落した現在、その初々しくベタな反応もかえってフレッシュに好ましく感じられる。
端麗な容姿に似合わぬ無邪気な喰いっぷり、同性をも萌えさせる天然ボケっぷりは、『モヤさま』の狩野アナにも通じる魅力アリ!
今回、新たに描き下ろされた新作2編では、深夜の牛丼屋での女おひとりさまとのバトル・エピソードが最高。10年のひとりライフを経た、百合子の成長もうかがえ、もっと読みたい!と切望せずにいられない。
また、ボーナストラックとして原作者である久住画によるネームやシナリオもたっぷり収録。
原作がマンガへと生まれ変わってゆく、原作付きマンガ製作の現場をのぞき見れるのも、マンガファンにはたまらない。
あとがきも含め、著者たちの作品への「愛」を感じる1冊。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69