『アヤメくんののんびり肉食日誌』第3巻
町麻衣 祥伝社 \670+税
(2014年11月8日発売)
女性読者にとっては、一番理想の男性ではあるけれど、一番面倒くさい男性でもあるかもしれないと言えそうなのが、町麻衣『アヤメくんののんびり肉食日誌』の“アヤメくん”こと菖蒲瞬だ。
彼は、T大・生物学科研究室の1年生。有名考古学者を父に持つ帰国子女で、ルックスもかなりの線をいっている。
華々しい経歴と見た目で、間違いなくモテ筋なのだけれど、さらに奥が深い……というか底が浅いというか、性格的には好奇心旺盛でいてのんびり屋。
個性派揃いの研究室でも浮いた存在で、それゆえにまわりからは変人扱いされてしまうことになる。
そんな菖蒲が、同じ研究室の2年生・椿雛菊(と書いて、デイジーと読む!)の裸を偶然見てしまい、彼女に「おっぱいを触らせてください」とおかしなアプローチを掛けることになる。
ただ、菖蒲自身は真剣そのもの。本当に純粋な欲求を伝えているだけで!?
そんな行動も言動も読み切れない菖蒲だけに、彼に言い寄られる椿は、思いきり振り回されることになってしまう。
妙に大人っぽかったり子どもっぽかったり、変に奥手だったりガツガツしていたり。
2巻でついにキスをして、最新刊3巻では晴れてカップルとなっているふたりだが、そこでも椿は菖蒲から意外な発言を聞かされて……。
草食系かと思ったらストレートな肉食系で、肉食系かと思ったらマイペースな草食系。
本人は無自覚ながらもひと筋縄じゃいかないタイプで、つきあう椿は振り回されながらもリードしていかないといけないという羽目に。
恐竜オタクの菖蒲だが、さながら本人が獣なのに草食という、草食恐竜のような男性でもある。
肉食と草食のどちらの魅力も持っていて、カッコよさもかわいさもあわせ持っているということでは、まさに一番理想の男子で、一番面倒くさい男性。
いや、そもそも面倒くさいだけに気になってしまって、構わずにはいられない男性こそ、椿含めて女性にとっては理想でもあるのかも!?
3巻では、優秀でイケメンなのに、性格的に問題ありな先輩・仁英(じんえい)も登場。
その仁栄と椿にハプニングが!
今後の展開も理想どおりとはいかずに、面倒くさいだけに魅力的でおもしろいことになっていきそうだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。