『コーポ失楽園』
五十嵐正邦 講談社 \429+税
(2014年11月17日発売)
主人公は世界一有名な夫婦、アダムとイブ。2人が住むエデンの園の真んなかにある禁断の果実は、じつは転送装置。その実を食べたとき、2人はそれぞれ別の場所に飛ばされてしまう。
行き着ついた先は、現代の日本。大勢の「猿」に囲まれて困惑しながら、アダムはイブを探しはじめる。
人間は神が作った、というのが創造論。人間は猿から進化した、というのが進化論。
この両方が成立していたらどうなるのか? というギャグマンガだ。
まずアダムとイブは、聖書と違って蛇にそそのかされず、46億年も禁断の果実を食べなかったという設定。
その間に、エデンの園の外側にいた猿が人間のようなものに進化。現代文明を造ってしまった。
つまり、アダムからみたら、現代の人々はみんな猿なのだ。本来は神が、アダムとイブが外の世界で、人類を繁栄させるという手はずだったのだが……。
イブはなぜかアダムの記憶を失い、地球上の猿(人間)たちのなかで、服を着て暮らしている。
彼女の記憶を取り戻すために奔走するアダムの、世間知らずっぷりがおもしろい。科学文明なんて知らなくて当然。ましてや今までイブしかいなかったのに、急にたくさんの人々に出会ったら、慌てたり興奮したりするのも無理もない。
一方で、回を増すごとに少しずつ記憶を取り戻し、キュートさが引き立つイブ。彼女の記憶喪失には、天使や悪魔もからんでくる。
純粋な人類としての2人の魅力が、全1巻にきっちり収められている。
神さまが決めた唯一のカップル。2人の行く末を見届けてほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」