『サボテンの娘』第2巻
桐原いづみ 双葉社 \600+税
(2014年12月10日発売)
1985(昭和60)年の名古屋を舞台にした、小学生6年生女子の青春グラフィティ。
子どもたちは名札をつけ、登下校にはヘルメット。男子が遊ぶのはキン消し。学校には七不思議があり、牛乳瓶の紙キャップで面子をして遊ぶ。
あまりにも懐かしい光景のオンパレード。80年代を経験した人なら、これだけでお腹いっぱいになれる。
といっても、懐古趣味のための作品ではない。80年代に起きた出来事や生活の様子を通して、少女の成長を描く作品だ。
主人公の家村優子は、12才の少女。多感な時期ではあっても、まだまだ子供。
第2巻では日本航空123便墜落事件を、テレビのテロップで見るシーンがある。
その後の夏祭りの夜店で、すぐ死んでしまうカラーひよこを見る。
彼女は気づく。「みんなと一緒に花火を見ている」ということの特別さ。生きていることを、学ぶ。
うまいのは、80年代以降に生まれた読者に向けて、「昭和」という未知のフィルターを通すことで、いったん距離を置かせていることだ。こうすることで、少女の成長を感傷的になりすぎないバランスで、客観的に読ませることに成功している。
読み終えた後には「じつは今と変わらない」ことに気づかされる。
一方、80年代に暮らした大人なら、逆に感情移入度は半端じゃなくなる、というのもまた巧みだ。
背景や小物がとにかく細かいので、ちょっとしたワンシーンで泣きそうになる。
さて、タイトルの「サボテン」。基本的にはあまり本編に関係ない。しかし第2巻でなぜ「サボテン」なのかが明らかになるので、ここは読んで確かめてほしい。
そのあとに1巻から読み直すと、ぐっと見かたが変わるだろう。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」