『煉獄のカルマ』第1巻
廣瀬俊(作)春場ねぎ(画) 講談社 \429+税
(2015年1月16日発売)
突然、屋上から飛び降りる自殺シーンから始まったことで話題をかっさらった本作。
夏でも長袖を着続けている少年・七瀬誠、それはリスカ傷……に見せかけた不良グループによる“自傷行為”を隠すため。
壮絶ないじめに耐えかねた誠は屋上から飛び降りるが、なぜか再び屋上に戻り、謎の美女と出会う。
「煉獄」とは、死者の霊魂が天国に行く前に罪を償う清めの期間。
天国へ行くほど穢れなき善人でもなく、地獄へ行くほど悪人でもない。どちらにしろ自己主張がまったくできない主人公が行くようなところだ。
ひとりが自殺すれば6人が不幸になるという。その6人を助けろ、全員を救うまで無限にループが続くということで、バッドエンドのフラグを回避して緻密なルートを組み立て……とゲームやマンガの知識がある読者ほど予想するはず。
が、あっさり裏切られる。
あるフラグをへし折って不幸を潰したと思ったら、別の場所でほぼ同じかたちのイベントが起こってしまう。
小賢しい知恵を絞るより、カラダを張って意志の力を見せたらんかい! というど根性っぷりが少年マンガ的ではある。
フラグ管理ゲーム性は味を添えるスパイスに過ぎず、本体はエグさ。
憧れの美少女が影で不良とつきあっていて主人公を馬鹿にしていたり、いじめられる少女の股に竹刀を当てるプレイだったり、バター犬だったり、「あとで救うからまずドン底に落とそう」という悪びれなさが最高だ。
ネタバレになるので伏せるが、この1巻以降の展開では「ある前提」がひっくり返される。
それが話の本筋じゃなかったのか! までリセットされるドキドキ感は、絶対に連載でリアルタイムに味わうべき。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。