『レアリティーズ』
岡崎京子 平凡社 \1,400+税
(2015年1月30日発売)
現在、世田谷文学館で開催中の『岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ』にあせて発売されたこちら。
同人誌やフリーペーパーに掲載された作品やイラストエッセイ、オリジナル単行本に未収録の短編など、文字どおりの「レアなお宝」が収録されている。
個人的には、「GOMES」連載のイラストエッセイ『虹の彼方に』や、故・川勝正幸編集の『ゴダールの決別』『うたかたの日々』といった映画パンフレットへの寄稿作などの90年代ワークスは、嗚呼、我が青春!といった感じで、感慨深く読んだが、やはり目玉は、83~84年の同人誌時代の作品群。
パンクな荒々しさと乙女チックなふわふわ感が同居したラフなタッチで描き出される、恋やお洒落にいそしむ女の子のポップで空虚な日常は、混沌としたニューウェイブな「時代」を感じさせるとともに、今も変わらない「女の子のリアル」を確認。その普遍性にあらためて驚かされずにいられない。
そして、巻頭のおそらく短大時代のものだという未完成作品。
途中までペン入れがされたまま、実家の学習机のなかに眠っていたという作品の放つ、鮮烈なみずみずしさに「彼女の彼女の冒険はまだ続いているのだ」とうれしいような悲しいような、ひとことでは言い表せない気持ちのかたまりが心にゴロリ。
ちなみに、展覧会との関連企画としては、岡崎作品の原画にくわえ、小沢健二、よしもとばななによる寄稿や今日マチ子などによるトリビュート作品を収録した400ページにおよぶ公式カタログ『岡崎京子 戦場のガールズ・ライフ』、『週刊オカザキ・ジャーナル』(「朝日ジャーナル」91~92年)、宗教人類学者・植島啓司との往復書簡「コトバのカタログ」(「広告批評」92~93年)という伝説の連載エッセイを収録した『オカザキ・ジャーナル』も刊行ずみ。
展示・書籍あわせて、変容する時代とその価値観に対峙し、マンガという形で世界に発信し続けたひとりの女の子のメッセージを、いまこそ改めて受け止めて。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69