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『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』第1巻 山本直樹 【日刊マンガガイド】

2015/03/29


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『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』第1巻
山本直樹 講談社 \1000+税
(2015年2月23日発売)


2010年、文化庁メディア芸術祭漫画部門で優秀賞を受賞した『レッド』が、新章へ突入。
装丁も新たに、1972年2月に起きた10日間もの人質立てこもり事件、「あさま山荘事件」にいたる最後の60日間を、引き続き当事者たちの目線から描く。

高度経済成長のなか、学生運動に傾倒し、革命運動へ身を投じていった“普通の”若者たち。
前章『レッド』(全8巻)では、1969年以降の社会的背景、彼らの思想や組織の流動が細やかに語られてきた。
1971年が終わる頃、彼らは山岳ベースを拠点に、銃による軍事訓練をおこないながら、革命戦士となるべく自己批判と総括を繰り返していた。

1972年元旦から始まる今巻では、榛名ベースにおける1月3日までの3日間が描かれる。
仲間内の総括要求は厳しさを増し、総括を援助する名目で暴力が生まれる。そしてついに、メンバー2人が壮絶な“敗北死”を遂げ……。

あさま山荘事件後の取り調べで明らかとなり、世間に衝撃を与えた「山岳ベース事件」の、始まりの3日間。これはまだ、12人もの犠牲者を出した最悪なリンチ殺人事件の、ほんの序章にすぎない。

徹底した取材ぶりも注目の山本直樹が、卓越した画力で淡々と紡ぐドキュメンタリーは、独特のコマ割や沈黙によって、胸にずっしりと重い読後感を残す、渾身の一作だ。



<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。

単行本情報

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