『BOYS BE・・・』第1巻
イタバシマサヒロ(作) 玉越博幸(画) 講談社 \379+税
1877(明治10)年4月16日、北海道札幌郡の月寒村島松駅逓所(現在の北広島市島松)。ひとりのアメリカ人教育者が、日本滞在を終えて母国に戻ろうとしていた。
彼こそは、札幌農学校(北海道大学の前身)の初代教頭であったウィリアム・スミス・クラーク博士。のちに同志社大学を創設する新島襄の招きで赴任して、農業をはじめ自然科学や英語、またキリスト教も生徒たちに教えた人物だ。
この帰国の際、クラーク博士は生徒たちにある言葉を贈っている。
「Boys,be ambitious」(少年よ、大志を抱け)
これにちなんで4月16日は「ボーイズビーアンビシャスデー」とされている。
博士の言葉は少年を奮起させるためのものだが、20世紀の少年を奮起も興起も喚起もさせた“ボーイズビー”といえば、ラブコメマンガ『BOYS BE…』だ。
イタバシマサヒロの原作、玉越博幸の作画による本作は、クラーク博士の言葉に反して、抱くべき大志も見つけられない少年たちが、未経験の恋愛に一歩を踏み出す作品となっている。
オムニバス形式でさまざまな主人公と女の子による物語が描かれ、なかでも読者を魅了したのが、萌えを極めた女の子の描き方。グッとくるしぐさやリアクションが満載で、胸の奥もヘソの下もわしづかみにされた、かつての少年も多いのでは!?
マンガを読んでキュンキュンしながら身悶えて、こんな子とつきあいた~い……なんて、クラーク博士には怒られてしまいそうだが、それもまた少年の大志というもので、そうさせるのもマンガの大志。
当時読んでいなかったという人や、未見という人は、ぜひこの記念すべき日に読んでみては? クラーク博士でも教えられない女の子のかわいらしさや厄介さ、そしてマンガの楽しさを、こちらのラブコメではあらためて学べるはずだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。