『小惑星(ほし)に挑む』
あさりよしとお 白泉社 \600+税
今から5年前の2010年6月13日。“はやぶさ”と名付けられた日本の小惑星探査機が、7年もの長旅の末に世界初のサンプルリターンをなしとげた。
JAXAの施設がある4市2町で組織する銀河連邦(神奈川県相模原市、秋田県能代市、岩手県大船渡市、長野県佐久市、鹿児島県肝属郡肝付町、北海道広尾郡大樹町)は、“はやぶさ”の偉業と関係者の「努力する心」「あきらめない心」を伝えるべく、2012年にこの日を「はやぶさの日」と制定した。
いま思えば、はやぶさフィーバーはすさまじいものがあった。20世紀フォックスが『はやぶさ/HAYABUSA』(2011年10月公開)、東映が『はやぶさ 遥かなる帰還』(2012年2月公開)、松竹が『おかえり、はやぶさ』(2012年3月公開)と、矢継ぎ早に3本もの映画が制作→公開されたのだ。「日本人の美談好き、ここに極まれり」である。
ブームから数年が経った今、はやぶさが何を目的にした探査機で、何が奇跡的な事象だったのか、明快に答えることのできる人はどれくらいいるだろう。
せいぜい「どこかの小惑星からサンプルを採取して、いろいろトラブルもあったけど、最終的には無事に帰れてこれてよかったよかった」程度の認識だろう。
そこでオススメしたいのが、SF・サイエンスマンガの第一人者、あさりよしとおの『小惑星に挑む』だ。
高度な文明を持つ2人の地球外生命体が、宇宙で迷子状態となっている小惑星探査機を見つけたことから始まる物語。その探査機(“はやぶさ”という名称は使われない)が、どのような旅をして小惑星までやってきたのか、サンプルを持ち帰ることにどのような意義があるのか、帰還の際にどのようなトラブルに見舞われたのか、地球に帰還できたことがどれほどすごいことだったのか……。
一連の流れが丁寧に解説される。
はやぶさブームが起こるはるか以前からプロジェクトの取材を続けていたあさりだけに、要点を抽出してできるだけかみくだいて伝えてくれるのがありがたい。
本作を読んでから、昨年の暮れに打ち上げられた“はやぶさ2”のニュース記事を読み返せば、これまでとはまったく違う景色が見えてくるはずだ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。映画『新宿スワン』(園子温監督/5月30日公開)の劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」