『PEACE MAKER』第1巻
皆川亮二 集英社 \590+税
去る6月15日、アメリカの老舗銃器メーカーであるコルト・ファイヤーアームズ社が、多額の負債を抱えて経営破綻したことは記憶に新しい。
7月19日は、そんなコルト・ファイヤーアームズの創業者、サミュエル・コルトの誕生日だ。
コルト社は1836年の創業以来、自動拳銃のスタンダードであるコルト・ガバメントや、.357マグナム弾を放つパワフルさと美しい外観から人気が高いリボルバーのコルト・パイソンなどなど……軍人から悪党まで、人々に愛され続ける数々の名銃を世に送りだしている。
コルト社の魅力的なラインナップのなかで、もっとも忘れてはならない銃が、コルトSAA(シングル・アクション・アーミー)だ。堅牢なフレームと、シンプルな内部機構による高い信頼性から西部開拓時代のガンマンたちに愛用されたコルトSAAは、西武開拓時代の主役としてフィクションの世界でも大活躍。
コルトの知名度向上に一番貢献しているのは、まぎれもなくコルトSAAだろう。
そんなコルトSAAと、それを愛用するガンマンの魅力を堪能できるマンガが、皆川亮二の『PEACE MAKER』だ。
天才銃士(作中におけるガンマンの通称)であるホープ・エマーソンが、仲間とともに運命に立ち向かっていく様が描かれる本作は、SAAを初めとするシングルアクション(弾を撃つたびに手動で撃鉄を引き起こす必要がある)リボルバーを用いた華麗なテクニックが大きな見どころとなっている。
一瞬にして3発の弾丸を標的の1点に撃ちこむ「スポットバーストショット」や、高速で3つの標的に弾を命中させる「ゲットオフ スリーショット」など、作中で描かれる妙技の数々は、ガンマンに憧れる者なら真似したくなること間違いなしだ。
だが、『PEACE MAKER』で活躍するのは必ずしもガンマンのみではない。
作中で開催される、世界一の銃士を決める大会「G・O・D」では、すご腕の銃士たちに加えて、なにを間違ったのか居合いの達人(銃士じゃなくて剣士)など、数々の変人たちが登場!
緊張感あふれる決闘の描写に加え、個性的すぎる敵VS正統派ガンマンの対決も堪能できるという、贅沢さからもトップクラスの西部劇マンガだといえる。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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