『でんしょのはなし』
鈴木みそ マイクロマガジン社 \1,100+税
(2015年6月30日発売)
電子書籍での自費出版に挑んで、大成功を収めた著者の鈴木みそ。
彼があらゆる電子媒体にかかわる人々に直接インタビューを行い、電子書籍の未来を考えるマンガだ。
インタビュー相手は、Amazon、DMM.comなどの電子書店サイトや、出版社、無料マンガアプリ「マンガボックス」を立ち上げた『MMR』でおなじみの樹林伸編集長や講談社から独立し有名漫画家エージェント会社・コルクを立ち上げた佐渡島庸平、そして現在急成長中のピースオブケイクなど多岐にわたっている。
ぶっちゃけていうと、「電子書籍の未来は全然明るくない」。
圧倒的に紙の本が、まだまだ売れる。販売数が落ち目だとしてもだ。
たとえば何か本を買おうとしたとき、リアル書店は店内そのものが「情報」だ。
何が売れているのか、新作はどれか、どんなことが話題なのか、そもそもどんな本なのか。
陳列を見ればひと目でわかる。だから、買いやすい。目に触れることが何より大切だ。
しかし電子書籍は、狙った一冊を買うのなら便利だが、「情報」を見せる場所がほとんどない。
売れ線だけを並べた小さな書店と同じ。人気商品は爆発的に売れるけど、そのほかは電子の海におぼれる巨大な在庫の山。
寡占化が激しくなるばかりだと語られる。
もっといえば、電子配信を使うのは電子機器に慣れている人だけ。
世の中みんながインターネットをやっているわけではない。
21世紀のこの時代でも、だ。
読むほどに、電子書籍や電子配信が商業の主流になるのが、いかに難しいかがよくわかる一冊。
と同時に「どうすれば電子で道をひらけるか」を、鈴木みそとインタビュイーが真剣に話しあっている。
ヒントは「国内で作った一冊の本をKindleで売ります」以外の道を探していく、ということ。
可能性は、今は小さくても、まだまだある。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」