『どんぶり委員長』第1巻
市川ヒロシ 双葉社 ¥600+税
(2015年7月10日発売)
まじめで高飛車な委員長は、調理実習でクラスの男子・吉田が勝手につくった親子丼を見て、衝撃を受ける。
男くさく下品な食べ物と敬遠してきたはずのどんぶりのことで頭のなかがいっぱいになった委員長は、吉田に親子丼を作らせて食べ、見事どんぶりの虜になる――。
……てななりゆきのもと、毎回、委員長が吉田に様々な創作丼を作らせ、みずから食べるという本作。親子丼、牛丼、ナポリタン丼、ベーコン目玉丼、二色コロッケ丼……など、独身男の自炊生活をそこはかとなく喚起させるカンタン&ガッツリ丼の数々は、「料理」というよりB級グルメのおもむきだが、それだけに即座に再現&かっこみたくなる不思議な吸引力がある。
しかし、本作のほかでもない魅力は、委員長のツンデレっぷりだ。「高飛車な女がオレの○○で虜に……」という設定は、いつの時代も男のファンタジーなわけですが、常に上から目線を崩さない委員長が吉田の丼だけには理性を捨ててガッつき、悶絶しメロメロになりながらも、かろうじて我を保ち、「うん、まあまあ合うわね」とドヤ顔で言い放つ姿も、マニアにはたまらない!?
ちなみに著者は主にパチスロ系コミックで活躍している作家だが料理が得意で、独身ひとり暮らしゆえに、せっかく作った料理をだれにも褒めてももらえないため、ネットで頻繁に料理写真を発表したりもしているとか(その顛末をつづったのが、エッセイコミック『ひとりぼっちだけどほめられたくてせっせと料理写真をアップしてます』)。
つまり、どんぶり料理人の吉田くんは著者本人であり、ワイルドな男メシでお嬢様を落とすという本作は、著者の願望でもある……と考えると、なるほど「丼の宇宙」とは、男のロマンにほかならない。
今後、どんな創作丼が登場するのか、そして委員長と吉田の関係は?
まだまだ丼ファンタジーは止まらない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69