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『怒りのグルメ』 土山しげる 【日刊マンガガイド】

2015/07/28


IkarinoGourmet_s

『怒りのグルメ』
土山しげる コアマガジン \583+税
(2015年6月22日発売)


日本人が何も考えずに、ぼんやりと讃辞を送ったり、夢中になったりする事象に疑問を投げかける月刊誌「実話BUNKAタブー」。
そんな気骨のある実話誌に土山しげるが連載していた『噴飯男(フンパンマン)』が、『怒りのグルメ』と改題しコミックス化された(連載は8月号で終了)。当WEBサイト発表の8月の「このマンガがすごい!」ランキングオトコ編でにも堂々の3位ランクインの話題作である。

昼食代にも事欠くスダレ頭の中年サラリーマン・細井守が、油ギトギトのバーベキュー丼や高飛車なつけ麺屋、不衛生な屋台やブラック居酒屋など、食を冒涜する連中に怒り心頭! デスメタルスタイルの噴飯男に変身して鉄槌を喰らわしていく激怒グルメマンガだ。

一時期よりは落ち着いたが、牛丼、ラーメン、回転寿司、居酒屋などの大手チェーンが激安合戦を繰り広げるなか、客側も「こんなに安い値段で食べているのだから、多少マズくても、多少不衛生でも、多少店員が無礼でも……」と我慢のハードルを高く設定するようになった。

だが、なけなしのこづかいでようやくありついたランチや晩酌を何よりも楽しみにしている細井にとっては、一食一食が大勝負。
「マズイものはマズイ!」と叫びながら、店員や経営者を改心させる様は痛快至極だ。

個人的な怒りが中心なので、時には間違いを犯すことも。
讃岐うどんの店で食事をした細井は、注文した釜玉うどんに問題がなかったのにもかかわらず、「固くなきゃ、うどんじゃない」という店員の言葉になぜかキレてしまう。
序盤にその伏線が張られているのだが、トホホすぎる理由が最高なので、ぜひとも読んでいただきたい。

アイドルがブログでほめていた店だから、テレビで紹介された店だから、行列ができる店だから……。
自分の舌を信じず、情報に踊らされて、マズい料理もうまいと言ってしまう愚かな現代人にカツを入れてくれる“噴飯男”。
彼こそが新時代のダークヒーローだ!



<文・奈良崎コロスケ>
マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。話題の映画『ピクセル』の劇場用パンフレットに参加することになり、80年代カルチャーを復習中。

単行本情報

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