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『少年Y』第8巻 ハジメ(作) とうじたつや(画) 【日刊マンガガイド】

2015/09/03


ShounenY_s08

『少年Y』第8巻
ハジメ(作) とうじたつや(画) 秋田書店 ¥419+税
(2015年8月7日発売)


中学2年生・栗原ユズルが転校早々目にしたのは、何者かによって虐殺されたと考えられるクラスメートの死体の山。そして、突如現れた謎の少女(神さま見習い)に、ユズルは他人の命に「ランク付け」することを強いられる……。
「チョチョイのチョイス」の掛け声のもと命の取捨選択が行われるデスゲームも、ついに完結。ゲームを引き起こした黒幕との対決が行われる。

今回ユズルが迫られる「選択」は、1巻で黒幕が手中におさめたクラスメイトの魂と、ユズルがここまでいっしょに戦って生き延びてきた山崎匡の魂。……となぜか、ユズルの姉・ミズホの魂。なんでだ!

重要なのは、予想外の問題が飛びこんできた時に、どちらを選ぶのか以前に、どちらかをきちんと選ぶことができるのか否かだ。
「選ぶ」という行為を、ダイレクトに死で表現したこの作品。とくに最終戦では、選んだ魂の存在を最初からなかったことにしてしまう、という重いおまけつき。今まででもっとも難しいゲームだ。

人は一生のうちで、銃器をぶっ放したり、刀を振りまわして人を惨殺するなんてことはまず考えない。しかし「選択」は、人間ならば必ずする。その結果によって、時には死以上の苦しみや哀しみが生まれることは充分ありうる。
「選んだ」ことによって、「選ばなかった」未来は消滅する。「選ばなかった」世界の可能性を殺す行為だ。

最後まで生き残ったユズル、匡、柚希の、選択に対する考え方はかなり複雑。
そもそも今までの巻でずっと、選びようのない選択(選べば無関係な人間のどっちかが死ぬ、など)ばかりを、強制力で選ばされ続けてきた。
極限の選択と、生き残るための知力対決。大小の差はあれ、人間はだれだって、人生で大きな岐路に立たされることがあるのと、同じじゃないか。

「チョチョイのチョイス」と軽い言葉で選ばれて、人がバンバン死んでいく、生命をかけたパズルっぽさは、最初から最後まで徹底している。選択のミスの残酷さを笑うのもひとつの楽しみ方。
個人的には、第7巻の「ドレミファ☆バナナゲーム」で、古今東西ゲームに負けたらゴリラが入ってきてぶん殴る、という『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の「笑ってはいけないシリーズ」のようなノリが一番好きです。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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