このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

超ベテラン漫画家・池上遼一(71)、『ガルパン』にハマって萌えイラストを描きはじめる【週刊「このマンガ」B級ニュース】

2015/09/23


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回のテーマは「池上遼一、『ガルパン』にハマる」

galpan_ph

『ガールズ&パンツァー コミックアンソロジー SIDE:プラウダ高校 』
アンソロジー 一迅社 ¥843+税
(2015年8月31日発売)

えっ!?
71歳の超ベテラン作家が萌えイラストに転向ッ!?
話題のもととなったのは、9月8日深夜に放映されたテレビアニメ『ガールズ&パンツァー』
BS11やSBS(静岡放送)などで現在再放送中だが、第10話のエンドカードを描いたのが、ほかならぬ池上遼一であった。ええええー!?
そんなわけで今日は池上遼一へのリスペクトをこめて、池上テイストを交えながら語るンで、ご容赦を!

池上遼一といえば、70年代に「週刊少年サンデー」で『男組』(原作:雁屋哲)を大ヒットさせたマンガ界のレジェンド。カルト的な人気を誇るマンガ版『スパイダーマン』(原作:平井和正)の作画担当者としても知られている。
そンな「リアル」で「美麗」な絵を描く劇画の大御所が当世風の萌え萌えな女の子のイラストを描いたのだから、注目を集めないはずがない。古くから70歳まで生きる人は希であるから70歳のことを「古希」というのだが、71歳の描く萌えイラストとなれば「超絶ウルトラ古希」とでも呼ぶべきなのか、ともあれ情報感度の高いネット界隈はビビッドに反応した。

GIRLSundPANZERmottolovelove_s03

『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』第3巻
ガールズ&パンツァー製作委員会(作) 弐尉マルコ(画) KADOKAWA ¥505+税
(2014年10月23日発売)

池上遼一は昨年10月に発売された『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ大作戦です!』(弐尉マルコ)第3巻のオビ文にイラスト付きで寄稿したことがある。
「実は私、女の子大好き、戦車大好きの普通のじじいでございます」という超絶ステキなコメントで『ガルパン』好きをカミングアウトしていたが、今回のエンドカードでその本気ッぷりが広く知れ渡ったようだ。


UruseiYatsuraSHINSOU_s12

『新装版 うる星やつら』第12巻
高橋留美子 小学館 ¥390+税
(2007年4月18日発売)

件のエンドカードは、多くのネットユーザーに「池上先生の描く女の子がかわいい!」と大好評だが、そもそも池上テイストの女の子は、ものすごくかわいいンである。高橋留美子『うる星やつら』の新装版コミックスには、34人の著名人がラムちゃンを描いた「My Lum×34」というコーナーがあり、12巻には池上遼一の描くラムちゃンが収録されている。これがまた、なンともかわいらしいンであるッ!


MAIcvsComic_s01

『MFコミックス 舞』第1巻
工藤かずや(作) 池上遼一(画) メディアファクトリー ¥571+税
(2006年10月発売)

そして池上遼一の過去作品を紐解くと、1985年連載開始の『舞』(原作:工藤かずや)の主人公・久住舞は14歳の女子中学生で、一人称が「ボク」! 時代を先取る「ボクっ娘」である。

2014年に森下文化センター(東京都江東区)で開催された「マンガの可能性を語る ~劇画・コミック・青年誌~」の第7回目(12月21日)では、作家・辻真先が池上遼一にインタビューする形式で講座が進み、「『舞』は英訳されてアメリカでも出版されており(タイトルは『Mai The Psychic Girl』)、それをもとにティム・バートン監督による映画化が進ンでいた」との裏話が、池上本人の口から披露された。
結局、バブルが弾けて映画化の話は頓挫したが、2010年に『アリス・イン・ワンダーランド』のプロモーションでティム・バートンが来日したときにも新宿で会ったというから、池上遼一キャラは世界をメロメロにするチカラをもっているわけだ。

ちなみに、池上遼一は水木しげるの元アシスタント。水木しげるの身辺を綴ったエッセイマンガにも登場し、『漫画狂の詩 池上遼一伝』(水木しげる『ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた!』収録)は、ズバリ池上本人が主役。
先輩アシスタントの茂毛(つげ義春がモデル)らとともに水木プロで修行し、プロデビューするまでの経緯が描かれる。映画で座頭市を見てモノマネをするとか、流行に敏感なトコロは、いま『ガルパン』にハマっている姿にも通じるンではなかろうか?
というか、水木先生の描く池上青年が非常に愛らしくて、そもそも池上遼一自体が萌えキャラなのであった。

また、池上遼一は原作者・小池一夫とのコンビで名作『クライングフリーマン』や怪作『赤い鳩』(「きょうのマンガ」でもとりあげたことがあります!)などを生み出している。
小池一夫も御年79歳にしてアニメ『魔法少女 まどか☆マギカ』を絶賛するなど、萌え文化に対して深い理解を示している。

もともとキャラクター作りこそ作品の要であるとの持論を展開しているから、現代的な萌えキャラへの観察眼も鋭い。
主宰する劇画村塾は高橋留美子や山本直樹、長谷川哲也など数多くの才能を輩出しており、そンな重鎮・小池一夫の口から「まどマギ」の言葉が出るのも、かなりインパクトが強かった。
小池一夫×池上遼一のゴールデンコンビで、14歳女子中学生の「ボクっ娘」魔法少女モノとか、読みたいじゃないですかッ!

世間では70歳をすぎたら、立派な「おじいちゃン」「おばあちゃン」である。
それが萌えアニメに傾倒するなんて、不思議なことに思うかもしれない。しかし、いまの70歳というのは戦後教育で育った世代であり、発想はかなり柔軟である。「年寄りは頭が固い」といった固定観念は捨てて、自分のおじいちゃン・おばあちゃンに萌え系のマンガやアニメを勧めてみてほしい。
もしかしたら、一緒になってハマるかもしれない。お金の工面にたいへんな若いオタクにとっては、おこづかいを出してくれる貴重なスポンサーになってくれるやも?

とりあえず11月21日公開の劇場版『ガールズ&パンツァー』に向けて、おじいちゃン・おばあちゃンにオタ・アプローチを仕掛けてみてはどうだろう?
責任はいっさい負いませンが。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

  • 『ガールズ&パンツァー も… Amazonで購入
  • 『新装版 うる星やつら』第12巻 Amazonで購入
  • 『MFコミックス 舞』第1巻 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング