日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『リップにシャドウ』
『リップにシャドウ』
依月リリー 小学館 ¥429+税
(2015年9月25日発売)
イケメンで運動神経もよく、ケンカが強くて面倒見もいい。
いっぽうで彼はコスメに詳しく、女の子らしさに関してはかなりうるさく、こだわりも人一倍。
そう、イマドキ人気のオネエ系乙女男子だったりするのだ。
そんな千景(ちかげ)と、同じ社宅でずっと兄妹のように暮らしている女子高生、梛(なぎ)。
彼女にはずっと片想いをしている汐見(しおみ)という男子生徒がいる。
ある日、梛はついに告白を思い立つ。
「いいんじゃない? アタシがうんとかわいくしてあげる」
そう励ましてくれる千景。
「自信持ちなさい。梛はかわいいもの」千景の言葉に背中を押され、梛は告白を果たしてみごと成功。
そして梛は汐見と初デートを迎えるが、そのいっぽうで千景は……。
ここまでの内容説明に、ついついセリフを幾つも引用してしまうほど、千景は本当に魅力的な男の子だ。
彼がオネエ言葉を使うようになったのは、女性になりたいというものではなく、ほかに理由がある。
その理由を知ると、彼が心からやさしく、それでいて不器用で、大切な相手をどこまでも思いやれる少年だとわかる。
この単行本には表題作ほか「ウサギはしゃべらない」「君のいないバレンタイン」という短編が同時収録されているが、いずれも心あたたまる作品だ。
特に「ウサギは~」は、ヒロインの紬も、ウサギの着ぐるみバイトをしている拓都も、どこまでもピュアでやさしくて、じんわりとくる。
この一冊を読み終えた時に、きっとだれもがあたたかい気持ちになれるはずだ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」