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『隠密包丁 ~本日も憂いなし~』第1巻 花形怜(作) 本庄敬(画) 【日刊マンガガイド】

2015/10/20


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『隠密包丁 ~本日も憂いなし~』


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『隠密包丁 ~本日も憂いなし~』第1巻
花形怜(作) 本庄敬(画) 日本文芸社
(2015年9月19日発売)


ときは江戸時代末期。
宮村惣右衛門(みやむら・そうえもん)は、昼間は一膳茶屋の料理人として働き、夜は北町奉行・遠山景元(とうやま・かげもと)に仕え、秘密裏に政府に仇なす者の監視などを行う「隠密」として暗躍している。
……のだが、世間のダーティな隠密のイメージとは裏腹に、惣右衛門は腕は抜群なれど任務の際も料理に目が行きがちであったりと、どうにもおっちょこちょい。

本作は、そんな二重生活を送る惣右衛門と、彼を取り巻く人々が江戸の街で繰り広げる粋な人情時代劇だ。
惣右衛門のもとに下される任務が、昼の顔である一膳茶屋での生活と絶妙にリンクしていく様は、読んでいてニヤリとさせられる。

そんな物語を盛り上げるグルメまわりの描写も、当時の生活を想像させてくれる素敵なもの。
本巻第3話では、著者の独自解釈で大正時代から日本に出回り始めたとされるマヨネーズが江戸時代に登場しているのだが、作中のリアリティを崩さないどころか、「たしかに!」と江戸時代の食考察への興味を駆り立てる理由が用意されている。

ほかにも第1話の味噌汁や、第9話のおだまきうどんなどなど……温かいタッチの絵柄と、緻密ながらも主張しすぎない作中での解説が、絶妙に噛み合って江戸時代の「食」を演出しており、派手さはなくとも毎話毎話で満足感を感じさせてくれるのだ。

切った張ったのマンガに疲れた方は、ぜひ本作で描かれる粋な包丁さばきに元気をもらっていただきたい。



<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
Twitter:@gakuton

単行本情報

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