日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『変ゼミ』
『変ゼミ』第11巻
TAGRO 講談社 ¥552+税
(2015年10月23日発売)
露出、盗撮、汗フェチ、匂いフェチ、飲尿、その他もろもろetc...
自他の変態的な趣味嗜好を研究テーマに掲げるゼミに集った若者たちの人間模様を描くマンガ『変ゼミ』が、さる10月に第10・11巻の同時発売をもって堂々完結を迎えた。
ディープな寝取られ趣味をもつ美青年・武蔵小麦に惚れてしまった常識人な女の子・松隆奈々子。
彼女が精神を根こそぎゆさぶられ続けるキャンパスライフはいったいどんな境地へたどり着いたのか?
原型となった単行本『変態生理ゼミナール』から数えて10年以上、本作『変ゼミ』だけでも8年にわたって展開された変態たちの群像劇の行く末をぜひ見届けていただきたい。
そもそも、変態とは何だろうか。
「変」であるとは、どういうことだろうか。
それはつまり、人とは違うということ。
自分は人とは違い、また他人も自分とは違っているということだ。
この世界に自分とまったく同じ存在はいないのだから、人間はだれしもが他人に対して「変」である。
変態な自分、変態な他人と向きあうというのは、この世にかわりのないひとりだけの私/あなたを好きになるということなのだ。
しばしば、すぐれた物語は、極端なものを描いて突き抜けた先でかえって普遍的なものに行きつくことがある。
「変」を極めて「恋」から「愛」へと至った本作こそは、まさにその好例だったといえる。
なお、最終巻には、「モーニング・ツー」連載の初期(単行本でいえば第3巻あたりの時期)に描かれたアナザーエンド的な番外編「終わりの季節」が収録されている。
本来は単行本に入らない予定だったが、掲載誌がオークションで高騰してしまったので、その対処として方針を変えたそうだ。
じっさいの最終回と読み比べてみる楽しみができて、結果的に読者にはうれしいはからいとなった。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7