日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『現代魔女図鑑』
『現代魔女図鑑』第4巻
伊咲ウタ 一迅社 ¥574+税
(2015年11月27日発売)
この作品で扱われる「魔女」は、それほど特別な存在ではない。
望む望まないにかかわらず、男女の区別なく日本人口の数パーセントが魔女。
たまたま魔女の血筋に生まれたかどうかだけ。
人間の、個性だ。
魔女と人間とが、区別がない状態で暮らしている様子を描いた、オムニバス作品集の4巻目。
ユニークなのは、「暴食の魔女」の話。
まったくお金がない大学生のもとにやってきた魔女。たくさん食べたいので「食欲」を貸してくれ、と言い出した。
てかそれ魔法なの? もっと効率いい方法ありそうだけども!?
じつはこれには、理由があった。
表紙に描かれている、少年・ヴァンと少女・ティアは、魔族。
無数の剣を出し、ケルベロスを飼い、強力な魔法弾で攻撃ができる。
能力だけなら、今まで出てきた魔女たちを、はるかに凌駕している。
たまたま採用条件が「魔女」だったので住みこみメイドになった涼子(特別な能力はナシ)も、次元の違う力に恐れおののいてしまう。
ところが接しているうちに、2人が魔界でも人間界でも居場所がない孤独な存在であることを知る。
生きていくうえでの悩みは、人間と何ら変わらない。
作中では「魔法=なんでもできる便利なもの」として描かれてはいない。
どちらかというと、その人物の生き方考え方が、モロに魔法のあり方に反映されている。
よきにせよ悪しきにせよ。
魔女の部活を行う少年少女、魔力があふれて制御できない女性、魔法が半端で幽霊になった妻。
力の強いもの、弱いもの、多様な人物が登場し続けてきた。「魔女」というくくりがあるとはいえ、描かれる物語はバラバラだ。
そのなかでも、特に大きな話題のひとつが、1巻の冒頭から登場していた「大魔女様」の存在。
「大魔女」とはなんなのか、現時点ではまだはっきりしない。むしろ描かれている彼女は、悩みを多く抱えるひとりの女性にしか見えない。
大魔女が動き始める時、まったくつながりがないと思われていた人物たちの物語が、一気につながりはじめる。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」