日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『海街diary7 あの日の青空』
『海街diary7 あの日の青空』
吉田秋生 小学館 ¥545+税
(2016年1月8日発売)
看護婦の長女・幸、信用金庫に勤める次女・佳乃、スポーツ用品店でバイトをする三女・千佳と、父親違いでサッカーが得意な中学生の四女・すずたち4姉妹の鎌倉での暮らしを描いた『海街Diary』。
2015年には実写映画化もされており、待望の新刊となる。
迷いに迷っていたすずは、彼氏・風太と語りあい、自分の意志で進路を決めた。
また、一度は家族をうしなった彼女の再生は、幸に「あるもの」をねだる行動に象徴されている。
幸と佳乃の、苦い経験を経てつかんだ新たな恋愛にも、大きな進展がある。
このまま穏やかな波に揺られるかと思いきや、いつも元気な「彼女」の雲行きがあやしい。
衝撃の展開につながるのだが、なにげない日常のひとときに、さりげなく伏線があることにもご注目。
今巻の陰の主役は山猫亭のマスター、福田さんではないか。
彼が、佳乃の想い人である坂下課長へ投げつけるように叫んだ言葉が突き刺さる。
表題作「あの日の青空」を含め、サブタイトルには「空」や「天気」にかかわるものがそろっている。
明日も今日と同じ状況であるとはかぎらない。だから、できる時にちゃんと、大切な人に大切な話をしておかなければ、一生どころか墓まで後悔を持ちこんでしまう。
そんな焦燥感に似た勇気をくれる。
登場キャラクターがまるで実在する人物のように身近に感じられ、一人ひとりとともに一喜一憂し、心を動かされるのがこの作品の大きな魅力だ。
ちなみに『ラヴァーズ・キス』にも登場していた藤井朋章の近況も描かれているのでこちらもお見逃しなく。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。