日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『愛蔵版 パールガーデン』
『愛蔵版 パールガーデン』
萩岩睦美 平凡社 ¥1,200+税
(2016年2月10日発売)
近年再評価が高まる萩岩睦美、80年代に「りぼん」で連載された人魚姫の物語が愛蔵版で登場だ。
連載時のカラーページに加え、カバー、付録、予告カットも収録。さらには4ページの描きおろしマンガも!
主人公のピアは14歳の人魚の少女。
親がわりのおばあちゃんが亡くなる前に、病気で死んだと教えられていたパパが生きている、しかも“人間”だと聞かされて……。
人魚のママが、海に落ちたパパを助けたことから始まった大恋愛だったが、ある時パパは通りかかった船に連れていかれてしまったのだという。
パパがいるデンマークに行きたいと心をつのらせるピアの前に、船から美しい青年グリーンが落ちてきた。
彼を“王子様”と見そめたピアは、彼とともにデンマークを目指す旅に出ることに。人魚のヒレが隠れるロングスカートに着がえていざ出発!
しかし、グリーンはいい人そうに見えてじつはサギ師。
ピアが道行きの軍資金がわりに持ってきた大きな真珠などの宝石、そしておばあちゃんに託された宝の地図を怪しいまなざしで見つめているのだが……。
無邪気で純真、“人間はみんないい人”と信じているピアがひたすらかわいらしい。
少女マンガらしい華やかさとほどよくイラストっぽいデフォルメタッチが融合した絵柄が、メルヘンな物語世界にぴったりハマっている。
会ったことのないパパへの思慕を軸に進むストーリーにはハラハラする冒険の楽しさ、コミカルなドタバタ、童話的モチーフ、グリーンとのちょっぴり▽(※▽はハートマーク)なムードも……と盛りだくさん。
夢いっぱいの萩岩ワールドをもっと味わいたい人には、同時刊行の『萩岩睦美短編集 魔法の砂糖菓子』もおすすめだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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