365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月6日はオペラ『椿姫』の初演日。本日読むべきマンガは……。
『講談社漫画文庫 DIVA』第1巻
小野弥夢 講談社 ¥650+税
1853年の今日3月6日は、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で、ヴェルディの著名なオペラ『椿姫』の初演が行われた日だ。
『椿姫』の原題を翻訳すると「道を踏み外した女」。
パリの高級娼婦・ヴィオレッタは、純朴な青年紳士であるアルフレードに想われて、真実の愛に目覚める。
しかしアルフレードの父親の反対を受け、彼女は身を引こうと決めた。
それが、アルフレードには心変わりと取られてしまい、ひどくなじられる。
やがて誤解は解けたものの、以前から肺病に侵されていたヴィオレッタは、愛の喜びを感じつつもついに息を引き取る――という悲劇のストーリーだ。
この『椿姫』の初演が大失敗であったことは有名な話だ。
準備不足に加えて、肺病病みであるはずのヴィオレッタの体格がよすぎたことも大きな要因だという。
しかし、今日ご紹介する『DIVA』の主役、リマ・ドールのそのきゃしゃな体格も愛らしい美貌は、まさにヴィオレッタにぴったり。
リマは父にヴァイオリニスト、母にイギリス一の歌姫を持つ、音楽の申し子のような少女。
ずっと父親からヴァイオリンのレッスンを受け、愛情を注がれて育った。
一方、世界的なプリマドンナである母は家庭をかえりみる様子もなく、著名な音楽家と浮き名を流している。
リマは母に反発し、父を慕う毎日だったが、突然その父親が事故死してしまう。
父の死に際にも舞台に立つ母を憎み、リマはついに母と絶縁状態に。
彼女はひとり、ヴァイオリニストになるべく音楽学校に通い始めるのだが――。
やがてヴァイオリニストではなく、憎んでいた母と同じ歌姫への道を歩み始めることになるリマ。
だがそこにたどりつくまでには、よく練られた設定のもと、いくつものドラマティックなエピソードが巧みにしかけられている。
読者は、あとはオペラの観客のように、そこに展開するドラマをただ楽しんでいればいい。
極上のエンターテインメントが、たっぷり味わえるはずだ。
そしてこのマンガのなかで大きなカギとなっているのが、冒頭にご紹介したオペラ『椿姫』。
第1巻冒頭では、リマの母である歌姫フィオナ=ロセッティが演じるのが『椿姫』のヴィオレッタ。
リマが初めて人に聞かせたアリアも、同じくヴィオレッタの「ああ、そは彼の人か」である。
なお、『椿姫』でもっとも有名な曲は「乾杯の歌」。
『DIVA』の華やかかつ波乱に満ちたストーリーを味わいつつ、オペラ初心者の方は、まずはこのあたりから楽しんでみるのはいかが?
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」