日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『コミックいわてぃー』
『コミックいわてぃー』
朝陽昇/そのだつくし/青木俊直/小田ひで次/高尾じんぐ
江川大輔/竹谷州史/飛鳥あると/大野将磨/田中美菜子
ナリタカ/とりのなん子/空木由子 いわてマンガプロジェクト ¥700+税
(2016年3月25日発売)
岩手県ってどんなところ? ともし聞かれたら、「東北で、わんこそばが有名で……」くらいの曖昧な返事しかできなかった私。
でも、本書を一読すれば大丈夫。
河童と仲よくできて、さんさ踊りを鍛えてくれる鬼がいて。
南部鉄瓶の釜じいちゃんが怒りながらも熱々の湯を沸かしてくれて、道ばたでは“わんこきょうだい”が話しかけてくれる。
そんな県だと、胸を張って答えられるようになりました。
……というのは、もちろん冗談として。
しかし、岩手ってこんな県だったんだ? と何度も感心してしまう一冊であることは間違いない。
民話や歴史的エピソードにあふれて見どころも多く、食べものもおいしくて、おお、そういえば今年はいわて国体の年か! などという情報までしっかり手に入る。そのうえで、いわゆる情報誌とはまったく違っている。どの作品も“マンガ”としての魅力にあふれており、ドラマのある観光案内ともいえるだろう。
岩手の魅力やエッセンスが短編マンガのかたちでぎっしり詰まっている、それが『コミックいわてぃー』なのだ。
また、たとえば「石馬」「三船久蔵」など、県民以外があまり知らない言葉にはきちんと注釈がついていて、ちょっとした岩手ツウになれるのもうれしいポイントだ。
執筆陣も、じつにバラエティに富んでいる。
エッセイマンガで人気のとりのなん子や、グルメマンガの高尾じんぐ、岩手の農家の嫁でもあるそのだつくしなど、ベテランからルーキーまで、それぞれが自分の得意ジャンルで岩手の醍醐味を語ってくれている。
その切り口は様々で、しかしどれもみなあたたかいのは、やはり県民性なのだろうか。
くすっと笑えて、じわっと涙ぐむ。じつに心地よいコミックだ。
そういえばみなさん、なぜ「岩手」県という名前なのか、ご存じですか?
これも本書を読めばわかります。ぜひご一読のほど。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」