日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『おはよう、いばら姫』
『おはよう、いばら姫』第3巻
森野萌 講談社 ¥429+税
(2016年2月12日発売)
家計を支えるために情熱を注いでいたサッカー部をやめ、「丘の上のおばけ屋敷」と噂される空澤家で家政夫のバイトを始めた高校生の美郷哲(みさと・てつ)。
そこのひとり娘・志津が、死者の魂を呼び寄せる憑依体質だという極秘事項を知ってしまう。
面倒見のよい頼れる男性、おしゃれ大好きな女性、園芸好きのオッサンに活発な少年……!?
哲は、次々に志津の身体を借りて現れる面々に困惑しながらも、彼女専任のお世話役として少しずつ心を通わせ始める。
『このマンガがすごい!2016』オンナ編20位にランクインの注目作、第3巻は哲の内面に大きくフォーカスした内容だ。
志津を外に連れ出さないように言われているものの、哲は彼女に普通の女の子の生活を体験させてあげたくて、休日の学校に連れていく。
しかし、タイミング悪く哲たちはサッカー部のメンバーと顔を合わせてしまう。
部を引っぱってきたのに突然理由も告げずに退部し、休日に“女の子を連れてぶらぶらしている風”の哲に部員たちは冷たい視線を注ぐのだ。
哲はもともとはやんちゃな少年だったが、心優しく責任感が強い。それだけに自分を犠牲にしながら、だれにも頼らず強がってしまうのだ。
志津の心に、そんな哲に何かしてあげたいと思う気持ちが芽ばえて……。
2人の心の距離がぐっと近づく新展開。
この不思議な人間関係がどこに結着するのか、ゆっくりと見守っていきたい。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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