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『百姓貴族』第4巻 荒川弘 【日刊マンガガイド】

2016/03/29


今回紹介するのは、『百姓貴族』


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『百姓貴族』第4巻
荒川弘 新書館 ¥680+税
(2016年2月25日発売)


じつに2年ぶりの新刊!

北海道の農家に生まれ、7年間農業に従事していた作者が、驚きの実話(一部フィクション?)の数々による爆笑エッセイ『百姓貴族』にまた会えるのは、思わず焼き肉パーティを開きたくなるほどの喜びだ。

「親父殿」の無敵伝説がまた更新された(ついでに「身代わり」もやっぱり発生!)。

法的な意味でも衛生的な意味でも、それって大丈夫なの……? と震える案件だらけの「伝え聞いた話です」シリーズでは、どんなに危ない橋を渡ってでも「うまいものを食いてえ!」との強烈な欲望に従い、パンクな行動をする農家の人々と、それにかかわる人たちも大目に見てくれる「懐の深さ」に驚く。
この快楽と余裕、まさに貴族の生活! あくまでも伝え聞いた話だけど!

こんなワイルドな環境やツワモノぞろいの家族に育まれたことが、女性作家とは思えない力強さの源では、と思えてしかたがない。
また、火星開拓をテーマにした妄想ショートストーリーのおまけで「宇宙船内では娯楽がないからマンガがはかどる」旨を迷いなく記している著者は、骨の髄まで漫画家であることがうかがえる。ああ、つくづく貴重な人材を農業のほうに持っていかれなくてよかった!
著者の農業青春マンガ『銀の匙 Silver Spoon』の本格再開も待ちどおしい。

ほかにも、ハードだが得るものは大きい酪農・畑作エピソードや、それにまつわる人情話もテンポよく描かれており、食の豊かさには心から憧れてしまう。
そんな人のために、農家へ嫁ぐためのアドバイスもありますぞ!

ただ、都会の婚活よりもずっと総合的な(ここ重要)「見る目を養う」必要があるので、甘くはなさそうだけれど……成婚のあかつきには、花束ならぬ「野菜束」でのブーケトスで決まり!?



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。エゾシカもおいしいけれど、イズシカもどうぞ!

単行本情報

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