日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『でんぐばんぐ』

『でんぐばんぐ』上巻
ニコ・ニコルソン 太田出版 ￥1,000+税
（2016年3月2日発売）

東日本大震災で被災した実家の再建を描いた『ナガサレール　イエタテール』、有名漫画家に密着取材した『ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り』……話題作を連発する注目作家の最新作は、漫画家青春ストーリー！
ちなみに本作はフィクションだが、主人公・二子の家庭のエピソードはほぼ実話だそう。

時は90年代。宮城県の海沿いの町に住む女子高生の二子は、オシャレライフに猛烈に憧れるお年頃。母と祖母との3人暮らしで朝食に並ぶのは、山盛りのいなり寿司、ふかしいもに白菜漬け。
そんな田舎っぽさを忌み嫌い、ひとりコーンフレークを食べる二子……女性は特にこんな姿に共感するのではないだろうか。

おりしも進路選択の時期、二子の願いはオシャレな仲間たちに囲まれ、オシャレな街に住み、オシャレなものを食べる……オシャレな漫画家になることなのだ。憧れはズバリ矢沢あい、安野モヨコ、魚喃キリコや楠本まき。
やっつけの受験対策では歯が立たずに美大受験には失敗したが、友人の誘いでデザイン専門学校という存在を知るや再び脳内はオシャレ妄想でいっぱいに！　そう、『ご近所物語』の実果子みたいな青春が待っているかも!?

しかし、晴れて入学を果たした二子は、オシャレでマンガの才能もある美少女（性格も◎）と出会い、親しくなるも複雑な心境に。
さらにはとびきり奇人のジョジョマニアの先輩（♂）のことが気になったり。

二子のぐだぐだ“マンガ道”……現時点ではとても漫画家になれそうに思えないからこそ、下巻への期待がいやでも高まる（笑）。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」