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『五時間目の戦争』第3巻 優 【日刊マンガガイド】

2016/04/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『五時間目の戦争』


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『五時間目の戦争』第3巻
優 KADOKAWA ¥580+税
(2016年3月2日発売)


ある日、時間割の5時間目に「戦」の字が入った。
四国の近くにある、ド田舎の離島。中学3年生の少年・双海朔(ふたみ・さく)と、幼なじみの安居島都(あいしま・みやこ)。
2人のいるクラスで、先生が言った。「戦争やるで 毎週金曜日の五時間目な」。

先生たちは「お国の命令や」「名誉なこと」という。クラスからは「本土」に出征する生徒が指名される。
しかし、朔と都は、なぜか行くことを許されなかった。

突然日常が崩壊し、死と隣りあわせになった少年少女の群像劇。
興味深いのは、戦闘シーンがほとんど描かれないことだ。

本土では熾烈な戦争が行われている。マンガで見られるのは、行く前に困惑する彼らの姿と、帰ってきて憔悴した姿のみ。
朔と都視点で、あくまでも島にいて、見守るしかない様子がつづられる。

無事に帰ってきてほしいと願うなか、無事戻ってくる者もいれば、そのまま戻ってこなかった者も、取り返しのつかないけがをした者もいる。
いつ駆り出されるかわからない、死と隣りあわせの日々が、淡々とやわらかい絵柄で描かれる。
作中の子どもたちが次第に状況に慣れていく様はぞっとする。

全員中学生。どんなに死が迫っていようが、みんなで楽しく過ごしたいと願うし、恋だってする。
都は幼なじみの朔にずっと恋していた。朔は転校してきた篠川零名(しのかわ・れいな)に惹かれていく。
第3巻ではこの三角関係に、大きな動きが起きる。

何と戦っているのかも、現時点ではまったくわからない戦争に行かねばならない、という恐怖の非日常を描きながらも、根幹にあるのは中学生がみんな抱える、悩みや苦しみだ。
出征が許されない朔と都に焦りが走るのはもっともだ。

しかし、いびつなルールがはびこる世界で、生きることを確約された2人だからこそ見えるものが、今後世界観が明かされるなかで出てくるはずだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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