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『魔法使いの嫁』第5巻 ヤマザキコレ 【日刊マンガガイド】

2016/04/07


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『魔法使いの嫁』


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『魔法使いの嫁』第5巻
ヤマザキコレ マッグガーデン ¥571+税
(2016年3月10日発売)


『このマンガがすごい!』本誌2015年版、2016年版で2年連続、オトコ編にランクインを果たした超人気作の5巻目だ。

動物らしき骨の頭部に角を持つ、異形の人外である魔法使い・エリアスと、「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる絶大な力を秘めた人間の少女・チセによる異類婚姻譚……といいたいところだが、まだそこまでは至らず、お互いが師匠と弟子となり、魔法と感情を教えあう関係を描きだす。
じっくりと練られた世界観やイギリス風の生活に根差した魔法の描写も大きな魅力だ。

助けを求めてきた、命と引き換えに文学の才能を与える妖艶な妖精リャナン・シー、およびバラ園の主で孤独な老人・ジョエルのために、ある薬を調合しようとするチセ。
だがその特性上、多大な困難が待ち受けていた……。

それでもチセが必死でこころみたのは、長い時を生きる人外と、短命を示唆された人間の組みあわせである、エリアスと自身を重ねたからなのであろう。

しかし、ただでさえ負荷がかかっているチセの身体が悲鳴をあげる。
妖精伝説ではおなじみの「妖精の取替え子(チェンジリング)」であるシャノンの荒療治により、チセは惜しくなかったはずの命の大切さを、あらためて実感する。
今ではエリアスもルツも、「お隣さん」たちも、みんな同じように感じているのだ。

エリアスとチセが暮らす家にて、家事をつかさどる物静かな妖精シルキーの意外な過去も明かされる。
彼女が黙々と掃除や冬支度、不思議な来客たちへの対応をしながら、2人の帰還を待つ姿は、ごく普通の世界に生きる私たちにも、帰る家があるよろこびを感じさせてくれる。

冬至の準備のために飾ったヤドリギの下で、エリアスとチセの距離がさらに縮まったようだが、「リア充め!」などと無粋なヤジを飛ばすのはナシで!
まだまだ危なっかしいところもある2人なのだから。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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