日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』第4巻
浅野いにお 小学館 ￥694+税
（2016年2月29日発売）

受験ももう間近。学生ライフをエンジョイする女子高生たちの頭上には、もう3年間も居座ったままの巨大円盤が浮いていた……。

侵略を受けた東京で、非日常のなかで日常を繰りかえす青春群像マンガ？　の第4巻が登場。気になる続きがやっと読める！

中川凰蘭（なかがわ・おうらん）、通称“おんたん”と、友人の小山門出（こやま・かどで）は、東京近郊の高校に通う女子高生。
すっかりおなじみの光景となった宇宙人の侵略戦争なんて、まったく気にせず、日々のだら～っとした青春にどっぷりつかっていた。

当初は「宇宙人による侵略戦争」という背景をベースに、ちょっとコアな女子高生たちの日常を描く、いわゆる「いにおスタイル」なマンガかと思いきや、大学進学間近に突如起こった、宇宙人との戦闘に巻きこまれた友だちの死で、物語が一挙に動き出したのが前巻（第3巻）だった。
ついに宇宙人の姿も描かれ、突如、戦争が現実感を伴って迫り、背景が主題におどり出たような印象だった。どうなっちゃうの？　と。

そして今巻では、友達の死が心の奥底にべっとりと暗い影を残しつつも、大学生となった彼女たちの新しい生活がスタート。大学らしく、竹本ふたばという新たな友だちも加わる。
だが、これまでの日常と違い、反戦デモで出会った人々との会話や、自衛隊の宇宙人に対する一方的な攻撃といった、戦争描写が増えてくる。

初めて、「宇宙人」側の視点で描かれた、まるで赤ん坊のような、全然怖くない彼らの、人間から逃れる危険な逃避行といったシーンが加わる。
人間と宇宙人双方の視点が登場したことで、読者の視点が急に俯瞰的になっていく、不思議な読後感だ。

「ポスト3.11」マンガの代表的なひとつになりつつあるこのマンガ。スタイリッシュかつ細密な描写と、非常に深い人物描写で独特の世界観を構築し続ける、作家性の高いマンガ家として、「浅野いにおらしさ」がより全力展開しそうな勢いだ。
確実に人類が滅亡するとわかったうえで、どのように終末へ向かうのか、やっぱり続きが待ちどおしい！

＜文・沼田理（東京03製作）＞
マンガにアニメ、ゲームやミリタリー系などサブカルネタを中心に、趣味と実益を兼ねた業務を行う編集ライター。