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『さよならハルメギド』第3巻 きづきあきら+サトウナンキ 【日刊マンガガイド】

2015/08/05


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『さよならハルメギド』第3巻
きづきあきら+サトウナンキ 双葉社 ¥620+税
(2015年7月10日発売)


あいかわらずサービス精神旺盛である。それでいながらエンターテインメントの皮を一枚はがせば、その強烈な作家性が作品のそこかしこにびっしりと張りついている。

『ヨイコノミライ!』『メイド諸君!』『うそつきパラドクス』などで知られる、きづきあきら+サトウナンキの『さよならハルメギド』である。

「ハルメギド」というハルマゲドンの語源となる言葉をタイトルに冠するとおり、作品のモチーフとなるのは1999年7の月、ノストラダムスの大予言だ。
作品の舞台は1989年。小学3年生の主人公・将太は、離婚した母親といっしょに母子寮で暮らしている。
同じ建物で男の子として育てられているボーイッシュな少女・菜々子、家庭に問題を抱えたクラスメイトの美少女・白田と親交を深める将太だが、3人は各人が胸のどこかで、世界の終わり、人類の滅亡を願うことになる――。

第2巻ラストでは、将太と白田へ意味深な視線を向ける菜々子、そして復縁をせまる将太の父親が不気味な影を落としていたが、完結となるこの第3巻では、そうした諸要素が有機的に絡まり合いながら、いかにも著者らしい結末へ向けて突き進む。

各話サブタイトルが「あの日見た~」という(某アニメ同様、ラストで描かれる10年後の夏の日も意図されただろう)形式で統一されているとおり、エピソードの合間には89~90年当時のカルチャー状況(おとなのふりかけ、ビックリマン、スーパーファミコンなどなど)を描いたカットが差し挟まれるなど、ノスタルジーコンテンツの側面も盛りこまれている本作。
全3巻を通し展開される息の詰まるような閉塞感もまた、90年代という時代の空気感を鮮烈に反映したものとして読めるだろう。



<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」

単行本情報

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